片翼の天使 3

 巴御前「何!今どこから投擲を?」

 モリアーティー「私もまったく気が付かなかった!一体何者か姿を現したらどうかネ?」

 

二人の声に反応してか、相手はその言葉を聞いて姿を現した。

 ?「おや?流石かの【時空の覇者】【異界の猛者】の異名をとる山本次官。その剣捌きは大したものね。…あれから相当強くなったということかしら?」

 

何処から現れたのかはわからないが、現れた人物は間違いなくビリー・ザ・キッド、のように見えるが、それは何かが違った。

 ビリー?「久しぶり、と言っておこうかしら?といっても、この姿じゃ何者か分からいか。」

と彼は言ったが、山本は既に分かってしまったらしく、寧ろ、彼は怒りで語気が強くなっていた。

 山本「いや、あんたは分からないと思っているかもしれないが、人間である自分にはあなたの正体がわかってしまう。そういうものなんだ、【星の災厄】さん?」

星の災厄。彼はそう彼に対してそう言った。その言葉に対し、彼は突如不気味な声で大笑いを始める。そして、その姿は最早人間の姿をせず、この星にいるとは思えない不気味な怪物へと姿を変えているのであった。

 

 ?「ハハハハハハハハハハハハハハ。私にはやはり理解できない部分だね。かつて、私があの星を食い散らかそうとした時もそうだった。いやはや人間の研究を進めてもやはり君たちは奥深い生き物だよ。食べるのは勿体ないね。」

片翼の天使 2

 山本「ん?君から電話をかけたわけではないのか?」

 クラウド「いや、そういうわけではないらしい。ついさっきまで違う人に貸してた上に、彼はスマホのない時代の出身だ。ビリー・ザ・キッドという人なんだが、知り合いか?」

 山本「ビリー?ああ、時空省に一緒についてきたよ?張遼たちと一緒に。なんでそっちにいるの?」

 

会話を横で聞いていた皆は、彼の言葉に凍り付いた。そんなはずはない。何故なら、その両名は間違いなくこの場にいるのだ。

 ビリー「え?そんなはずないよ!僕ずっとこの冬木で森の中をさまよってたんだから。なんか罠とかいっぱいある森でもうそれはそれは大変だったから。」

 

山本次官もそのことを聞いて凍り付く。いや、まさかとは思うが、確かにここは偽のカルデア。ということはだ。今まで自分に帯同していたうちの数名はいつの間にか入れ替わった偽物だったということだったというのであろうか?

 山本「本当だ。今のは間違いなくビリーの声で間違いない。張遼殿の驚きの声も聞こえた。…ということはだ。」

山本の嫌な予感はすぐに的中した。が、的中したおかげですぐに判断できた。何処からか彼目掛けて飛んできた何かしらの飛び道具を、冷静に己の愛剣【白閃】で受け流した。

片翼の天使 1

その相手とは、阿僧祇の闇と呼ばれる異空間に迷い込んだ山本時空省次官その人である。山本次官自体も、電話相手がかつて出会ったことがあるクラウドだと分かり、思わず声が上ずってしまう。

 

 山本「クラウドか!いや、まさか電話の相手が君だとは。正直驚いたよ。」

 クラウド「いやいや、まさかあなただったとは。…あの時以来、ですか。こうして会話するのは。」

 山本「ああ、あの時以来だ。復活したあの怪物を俺のせいあんなことになってしまって以来だ。いまだに、君たちには申し訳ないと思っている。」

 

山本は、何かを思い出したかのようにクラウドに謝罪する。周りの皆、この場合は電話の会話内容を聞いている人たちからは過去に何かあったのかということは理解できた。が、二人の会話内容からすると、互いに相手のことを悪く思っているということでもないようだ。

 

 クラウド「構わないです。あの事件は俺達にも予想がつかなかった。でも、あなたの部下があんなことになってしまうなんて。」

 山本「ああ、俺の力不足だったとしか言いようがないよ。何もできなかった自分が未だに不甲斐ないと思っている。…いや、しんみりするために電話をかけてきたんじゃないだろう?いや、厳密にいうと、互いに誰かの力によって電話を掛けられたようだけど?」

世に仇し者 セフィロス 11

さて、先ほどのセフィロスの分身に幻を見せられていた一行は、気づいていたら山のふもとまで一気に下りていた。

 クラウド「…そういえば、何故か山を下りていたな。喫茶店兼お土産屋さんの店主も無事に一緒に登山してる。…気絶したままだけど。」

 忠勝「いやぁ先日からいろんな目にあっておりまするが、拙者、もはやついてはいけませぬ。」

 アルク「私もね。なんか図書館で本を読もうなんて変なことを考えたから。…さてさて、これからどうしよっか?」

 アルカード「そうだな。…ん?誰かのスマホから音が鳴っているみたいだが?」

 ビリー「いやいや、アルカードさんスマホなんて知ってらっしゃるんですか?」

 アルカード「こう見えて、私は2036年から来たのだが?と、そうではない。話がそれた。戻そう。何故だかわからないが、悪魔場が再び姿を現したという話を聞いたら、何故か時空間を彷徨うことになってしまってな。気づいたら、君のいる図書館へと迷い込んでしまったというわけだ。…と、クラウド、電話の話し相手はいったい誰なんだ?」

 

一応、アルカードからすると今回のセリフは超が付くほどの長文である。…そんなことより、今大事なのはクラウドの電話の相手が誰だということである。それは、クラウドがかつて出会ったことのある人物であった。

世に仇し者 セフィロス 10

元の世界軸。セフィロスは何やら意味深なことを口に出した。いったい何を指示しているのか、今の時点では何も言えない。ただ、今の彼は己の分身が大量に映し出されたモニターをじっと眺めるだけだ。それも、一つではない。あらゆる世界に作り出し、宣戦布告する己の分身。それを見るセフィロス。そして、一斉にそれは先ほどの分身と同様に消滅したあと、何かの機械を落としていった。

 

 セフィロス「さて、俺本体は…。そうだな、やはり【冬木】に行くのがいいだろうな。クラウドに会いに行くのももちろんだが、今俺が興味を持つのは、サーヴァントの存在だ。」

そのまま、彼は何もない空間からどこからともなく自分の身の丈はあろう己の愛刀【正宗】を取り出し、何もない空間に向けて振り下ろす。すると、空間が裂けたではないか。

 

 セフィロス「時間は先ほどのモニターに映し出された時より20分前。アインツベルンの森だ。あの娘の夢を利用してあの偽の冬木を作り出した那由多銀河が真っ先に降り立った場所だ。」

 

そのままセフィロスは、その空間の中へ入り込む。これから起こることは、後に先の偽冬木と一括りに冬木事件ということで、時空省全体に知れ渡ることになる。

 

 

世に仇し者 セフィロス 9

クラウドは、特に何も起こらないことを確認したのち、その場から離れる。と、同時に、炎が一斉に静まり返った。と、いうよりは、あったはずの炎が消滅したといったところが正しい。

 

 クラウド「やはり、幻覚を見せられていたか。」

 張遼「幻覚…ということは今まで見ていたものは?」

 アルカード「奴の見せた、幻だったということだろう。しかし、なかなか手の込んだ厳格だったな。すべて、本当のことのようだった。」

 

クラウドは、以前も似たような経験をしていたため、途中から違和感に気付いたのだ。恐らく、この幻覚を見せたのは、どこか別の場所にいるセフィロスともう一人いるはずだ。

 

そのセフィロス本人はというと、ずっと先ほどから【阿僧祇の闇】の中に作り出されたモニター室から動いていなかった。先ほどの幻は、セフィロスが見せたもので確かに間違いはない。が、それだけではない。彼には、ある協力者がいた。謎の科学者【ゼーナ博士】である。

 

  セフィロス「…まさか、驚いたな。これほどの幻を同時に作り出せるとは。おかげで、あらゆる世界に【宣戦布告】できた。…流石に、奴が介入してくるのは間違いないが、残念だが、もうこの空間は俺のものだ。あの博士に、感謝しておく必要がある。流石は、俺の細胞のもとになっただけはあるというわけか。元の世界軸の俺は、この状況をどう思っているだろうな?」

世に仇し者 セフィロス 8

彼女の言葉に、セフィロスは返答するつもりはないらしい。それどころか、機嫌を損ねたようで、そのまま後ろを振り返り、どこかへ行ってしまうようだ。

 アルク「って、ええ!どっか行っちゃうわけ!ここまで用意周到にやっといてそれは。」

 

と、彼女が言い終わる前に、セフィロスは威圧的なまなざしで全員を見る。が、不思議なことに、クラウドに対してだけはそこまでないようにも思えた。兎も角、少なくとも言えることは、セフィロスクラウドに対して浅からぬ因縁があるということは理解できた。

 

 セフィロス「残念だが、お前とじっくり話す機会は終わってしまったようだ。…それに、この仮の体も時間切れのようだからな…。」

 

時間切れ。セフィロスはそう間違いなくそう言った。そう言い残すと、そのまま彼は後ろを振り返ったと思うと、まるで体が煙のように消えていく。

 

 クラウド「待て!セフィロス!…いや、まて。仮の体だと?」

クラウドは、何か思い当たる節があるようで、落ち着いた様子であたりを見渡す。すると、クラウドの目の前に何やら気味の悪い紫色をした肉塊が現れた。そのままクラウドは剣を構えたが、その肉塊は霧状にそのまま姿を消してしまった。そして、その場所には、何やら小さい機械が落っこちていた。

 クラウド「…どうやら、今回は襲ってきたりはしないようだな。」