片翼の天使 10
ベン「そのためには、出来るだけ早く我々が用意した場所へ移動させねばなるまい。幸い、邪魔するものはいなくなった。さて、儂は早速彼に伝えるつもりじゃ。」
六道仙人「儂も彼らを早くあの森へ導かねばな。さて、では互いに無事を祈るとしよう。」
そうして、作戦は開始された。まず、六道仙人はクラウド達の前に姿を現すところからだ。さて、どうして姿を現したものか、ちょっと悩んでから早速行動に出た。
六道仙人【さてさて、先ほどの話は聞いたであろう。わしの声は聞こえるかな諸君?】
クラウド「どこからか声が聞こえる!?」
アルカード「私にも聞こえた。どうやら、テレパシーのようだが、誰だ?」
6人とも辺りを見回すと、確かにその人物はいた。その目には、波紋のような模様と勾玉模様が重なり合ったものが浮かんでいた。そして、その姿は、どこか山伏のような恰好をした老人で、威厳を感じさせる人物であった。そして、その老人は、座禅をしたまま宙に浮いているのである。
ビリー「うわ!いつの間にそんなところに!…って、おじいさんいったい何者?」
彼の反応は正しいだろう。突然、目の前に仙人が現れたらさすがのサーヴァントも驚くだろう。
六道仙人「まぁそう驚くのも無理はなかろうな。わしの名は大筒木ハゴロモ。別名六道仙人という者だ。其方たちの前に姿を現すのは、世の安寧秩序を其方たちならもたらすことができると踏んだからだ。」
片翼の天使 9
ベン「さてさて厄介なことになった。…さて、そちらにおられているのはもうわかっているのですよ?」
六道仙人「どうやら、気づかれてしまったわけですな。それも仕方がないでしょう、まさかの■■■■相手なら、姿を隠していても、この通りばれてしまうでしょうな。」
どうやら、六道仙人であっても敬意を表す相手らしい。ベンと名乗る人物、なかなかすごい人物らしい。
ベン「いや、本来ならもう消えていた筈なのになぜか再びこうして意識がこの宇宙のどこかにある星で表層に出てきてはいけない存在なのだ。」
六道仙人「しかしです。そうだとしても、こうしてテレパシーで話し合っているということは、この宇宙があなたをよんでいるのです。」
ベン「そういうことは、本来宇宙を警備している組織や聖闘士にでもまかせておけばよいのだ。と言いたいところだが、フォースがそれを許してくれないらしい。」
ベンは、そういいながら嘆息した。果たして、何億年と時間がたったことか。そして、その復活した理由がまさかあの男が復活して暗躍しようとしているとは。その前に、今はその彼と同等かもしれない男が暴れ始めたので、まず山本次官をこの冬木へ一旦ではあるが連れていく必要がある。
片翼の天使 8
と、彼女が物憂げに話しかけようとした時、どうやら彼女でも予想だにしていないことが起こる。どうやら冬木側、すなわちから突如凄まじい轟音が響き渡ったのである。
ジェノバ「なに?せっかく話しかけようと思ったら何かすごい音がしたわね。」
山本「どうやら、緊急事態が起こったとみていいな。どうやら、相当すさまじいことが映像を見る限り起こっているようだ。というわけでだ、一旦ここは話を区切らせてもらっていいかジェノバ?」
クラウド達を映し出していた立体映像は、【正直言ってどういったシステムで彼らを映しているのかわからないのだが】いつしか森の方を映していた。どうやら、アインツベルンの森の方角らしい。
ジェノバ「そうね。話の続きをしたいのだけれども、一応また会う予定があるし、その時まで温存しておこうかしらね。この分身もそろそろ持たないみたいだし?というわけで、また会いましょう人類の希望達。私本体は遠くから見物しておくわね。」
と言い残すと、彼女の体はいびつに崩れ、その場には、紫色をしたヘドロのようなものが残っているだけだ。
ここまでの状況を見つめる者が二人いた。何処からかテレパシーで話しかけてくるベンと名乗る老人と、クラウドのそばにいながら姿を隠している六道仙人は、爆発の原因をいち早く感じ取っていた。
片翼の天使 7
が、得られる情報は衝撃的なものとはこの時は知る由もない。彼女の口から語られるのは、それほどのものとなった。その前に、彼女は、因縁の敵であるクラウドに何か言いたいことがあるようで、久しぶりに話す友人のように語りかける。
ジェノバ「久しぶりになるのかしら。意外とこうして面向かって話すのは初めてじゃないかしら?」
クラウド「そういうことになるな。まさか、お前がこの世界にいるとはな。それに、まさかの人間のふりして科学者になっているなんて遥か想像の斜め上だ。」
ジェノバ「あなたの言うとおりね。私も驚きさ。あの人【銀河】に出会うまでは、私はただの怪物だったでしょうね。しかし、今は立派な科学者…だったけど、今度の事件で追われる身になるのはもう間違いないでしょう。」
しかし本当に不思議だ。何故この宇宙生命体は科学者になっているのか?クラウドは正直に疑問をぶつける。
クラウド「間違いないって、お前それでいいのか?というのか、お前が科学者になった動機がいまいちよく分らない。」
ジェノバ「まぁそうでしょう。説明すると、あれは5年前かしら。あの方とあって私もいろいろ変わったということかしら。」
片翼の天使 6
ジェノバ・アバター「あら、分身であるこの体からでも私本体の記憶を読み取れるなんて、やはりあなた大したものね。そう、あなたにはもう正体がばれてるから名乗らせてもらおうかしら。表向きは、25世紀の女科学者【ゼーナ・アレンティーノ】。その正体は那由多銀河の使徒が一人【ジェノバ】。それが私の真名。」
すると、怪物は再び姿かたちを変え、今度は美しい銀色の髪をした、白衣を着た長身の女性に変化した。
ジェノバ・アバター「さてさて、あの怪物形態はちょっとエネルギーを使うので、この姿でいさせてもらうわね。…それと、電話越しの人たちともちょっとお話に加わってもらうおうかしら。」
と、彼女は指を鳴らすと、クラウド達の前に突如となくホログラムが現れ、偽のカルデアこと、阿僧祇の闇が作り出した空間にいる山本達が映し出される。それとは逆に、山本達のところには、クラウド達がホログラムに映し出された。
山本【これは…。クラウド、君たちのところには忠勝殿がいるのか。それに、張遼殿も!…ということは、あの二人も偽物だったというわけか。完全に俺ははめられたというわけか。】
どうやら、この偽のカルデアにいたと思っていたあの二人も偽物だったということだということに改めて気づかされた山本次官。敵はなかなか用意周到であるようだ。しかし、一体いつ偽物と本物が入れ替わったのか謎である。が、今はジェノバとクラウド達と話すいい機会。何か情報が得られるかもしれない。
片翼の天使 5
そう困惑している皆々をよそに、その怪物は言の葉を開く。一応、口らしい物は存在しないのであえてこういう表現をする。それが言うにはこうだ。
?「…とまぁ貴方をイラつかせてしまったみたいだけど、今はそう戦闘態勢取られても困るのよ。…この体はあくまで仮だし。」
モリアーティ「まぁ確かにそういわれてみれば、余り生命反応が強くはないみたいだネ。いや、あなたが男性か女性かはわからないが…」
巴御前「そうですね。生き物というにはあまりにも生きている感じが弱いですね。ということはこれは?」
山本「またその手段か。いわれてみると、それがお前の常套手段だったな。が、その力を利用して時空省の歴史室室長毛利殿から情報を抜き取ったのは既にばれている。まぁそうやっていろんな星々を滅ぼしまわったんだろうけど、ゼーナとかいう偽名なんか使って何を企んでいるのやら?」
超能力。山本次官には不思議とそういったものを持っていた。その中の一つである、思考の透視を用いて相手の思考を読み取った。相手のプライバシーを覗く故、あまり使わないが、相手は星々を滅ぼす外道。本来なら名を持たぬ異形の怪物。星を食い尽くし、その星を船としてまた新しい星を食いつくす、星の厄災。して、ある世界にてつけられた仮称は【ジェノバ】。これがこの怪物の正体である。
片翼の天使 4
電話越しからも聞こえる謎の声。どうやら、電話越しの向こうでは何か大変なことが起こっているということがクラウドからでもよく分かった。
ビリー「何だ?急に僕の声が聞こえたと思ったら今度は変な声が。」
アルカード「これはただことではないな。…あちらの状況が見られればいいのだが…」
今のところ、状況がよくわからないため、今はただ電話越しに祈るだけのクラウド達、一方、山本たちは、目の前の怪物相手に臨戦状態だ。
山本「そうやって笑ってられるのも今のうちだ。俺はあれからお前を倒すために強くなった。」
?「そうかしら?確かにあの時に比べて肉体は強くなってそうねぇ?でも、私にはよくわからないけれど、人間には精神というものがあるじゃない?それは未だ未熟な部分がありそうよ?」
山本は、その言葉を聞いて否定はできない部分があった。確かに、まだ自分にはぬぐい切れないトラウマがある。しかし、それを乗り越えるためのものが今まさに目の前にいるのだ。この好機を逃さないわけにはいかない。
山本「いや、お前を倒せばそれも終わる。お前を乗り越えれば俺は本当の意味で強くなる。」
彼の過去に何があったのか。そして、目の前で彼を嘲笑する怪物になんの因果があるのか、周りは皆目見当もつかない。