序章-3 Force your way ~不死身の敵に挑む~

一方で、孫一達三人は、数では有利な条件であるにもかかわらず、苦戦が続く。

スコールは、『連続剣』で応戦し、孫一は遠くから狙撃、アームストロングは錬金術近接格闘術を駆使して闘うものの、

仮面の男は苦無とすり抜ける術で、松永は火薬と素早い動きで相手を翻弄する。

スコール「このままでは、足止を食らったままだ。早く援軍に行きたいが、その前に体力の消耗が激しすぎる。」

孫一「ああ、確かにこのままあのおっさんたちに遊ばれてしまうのは嫌だから早く何とかしたいんだが。」

アームストロング「うむ… むしろ、こちらに援軍が欲しい状況とは、情けない話ですな。」

このままでは、延々と決着が着かない。いや、寧ろこちら側が危険である。三人伴、考えは同じである。

その三人を見つめ、悠々と構えている松。その顔は、依然として余裕の表情である。

松永「さて、そろそろ終わりにしたいが…我らも時間の余裕がないかもしれないのだよ。君たちの期待している援軍とやらでね。」

松永は、市内の中央からやってくる、編成された軍の部隊を見つめていた。

仮面「さて、俺たちはもうこのぐらいでいいだろう。『本来の目的』を達成するため、今は死人に扮している奴に任せるとしよう。」

その言葉に、松永は「無論、そうするとしよう。」と言い放ち、指を鳴らすと、最後の爆発が駅構内に響き渡った。

三人は、爆風によろめき、気づいた時にはもう二人の影は無かった。

まもなく、アメストリス軍の部隊が事件現場に到着した。軍の部隊の中には、アームストロング少佐の知り合いである

リザ・ホークアイ中尉もいた。彼女は、軍の中でも銃の扱いにたけている人である。

ホークアイ「…あれは、アームストロング少佐!早く彼のもとへ行きましょう。」

中尉は、部下数名を引き連れ、三人のもとに駆け寄った。

部下たちはアームストロング少佐に駆け寄り、中尉は彼に声をかける。

ホークアイ「アームストロング少佐、ご無事ですか?」

少佐は披露しきった状態であったが、「なんとか無事であるようだ。」と返答した。

中尉は、後ろにいる二人に気づき、「あちらの二人は?」と少佐に質問した。

アームストロング「勇敢な青年たちだ…私を救ってくれたよき人たちだ。詳しい話は彼らから聞いてくれ。」

そのまま彼は何も言わず、戦線を離脱する。ホークアイ中尉は、スコールと孫一に対して敬礼した。

ホークアイ「今回は、アームストロング少佐を助けていただき、ありがとうございます。」

彼女の行為に対し、スコールは、SEED式の敬礼を行った。その傍ら、孫一は慣れないのか、肩をすくめる。

二人の性格の違いをよく表していることが、よくわかるだろう。

スコール「いえ、寧ろお役に立てず申し訳ありません。」

孫一「ん~まぁ確かに、あまり役に立たなかったかもしれねぇな。相手には逃げられちまったし。」

ホークアイ中尉は、対照的な質問をしようと二人に話しかけようとする。しかし、爆音がそれを妨げた。

どうやら、セントラルの市街地から聞こえたようだ。街に住んでいる住人達は、パニックを起こし、一帯は阿鼻叫喚の混沌と化す。そこに、一人の兵士が中尉のもとに報告しにくる。

ホークアイ「一体何が起こったのですか?」

兵士「それが、謎の兵器三体がセントラル市街地に現れました!!二体は同じ兵器で、もう一体は全く違う兵器です。」

報告を受け取ると、ホークアイ中尉は兵士に伝令を伝え、近くの兵士から無線を借り、連絡を始めた。彼女の行動は、終始冷静である。

ホークアイ「大佐、聞こえますか?応答願います。」

そうすると、無線から端正な声をした男から連絡が入る。声の主は、彼女の上司である『ロイ・マスタング大佐』だ。

マスタングホークアイ中尉か。どうやら、派手なことが起こっているようだな。君も、セントラルに出向して数日でこれとは。ついてないな。」

中尉は、すぐさま「全くです」と返答を返す。

マスタング「それで、一体何があった?」

ホークアイ「市街地に見慣れぬ兵器が暴れているとの報告です。どうやら、先ほどのテロに関係しているのではないかと思われます。」

マスタング「そうか。どうやら、想像以上だな。何、援軍なら問題ない。東方司令部と大総統府が動き出したようだ。もう間もなく、さらに増援が来るだろう。」

ホークアイ中尉は、最後に「わかりました」と返事を返し、連絡は終了する。

中尉は、孫一とスコールのいた方向を振り返った。しかし、いない。そう、いないのだ。間違いなくそこのいたはずなのに、気づくとそれなりに遠くにいた。

中尉は二人を制止させるために、大声で二人に呼びかけた。

ホークアイ「あなたたち、ちょっと待ちなさい!! 今動くと非常に危険よ!!」

だがしかし、中尉の叫びもむなしく、二人の近くで爆発音がした。埃が宙を舞い、二人の姿は見えなくなる。

中尉は爆風をよけつつ、二人のいた方向を見ると、こちらに向かって走ってくる人影が見えた。先ほどの二人と、さらに四人の人影が見える。

私と辻谷君、そしてエルリック兄弟がが加わったのだ。どうしてこうなったのかを今から説明しよう。

我々四人がアイザックと戦闘しているところまで時間を戻すとしよう。

アイザックと思わしき男は、私の『招待を暴く』という言葉に困惑する。

アイザック「何?正体を暴くだと」

私は、アイザックに指差し、尋問するかの如く話す。

山本「とぼけるんじゃない。あんたの術はこの世界にあっちゃぁいけないものだろ?『光の教団』の幹部さんよ?」

私の横で話を聞いていたエドワードは、私の言葉に困惑する。この世界にあってはいけない術?光の教団?いったい何を話しているのか分からない。

━それに、アイザックも「貴様!何をわけのわからないことを…」と言おうとしている。

しかし、私はさらに追及する。

山本「分けのわからないことを言うと、そう言いたいんだろう?だが…」

私は、再度片手を突き出す。アイザックも術で対抗し、水を錬金術で…いや、『魔術』で氷を作り出すが、私の術で爆発を起こす。アイザックもどきは、再び術を繰り出そうとするが、そこで私が最後の追及をする。

山本「片手に描かれた錬成陣はお飾りかな?術をだそうとしているのに『錬成反応が一切ない』のはおかしいんじゃないかな。」

アイザック… いや、もうこれで彼は偽物であると確定した。

エドワードとアルフォンスは、その言葉を聞いて驚愕する。今まで見たものは一体なんだったのか?錬金術ではない。だとすると一体何だというのか。

二人は初め、『賢者の石』と呼ばれるものを使用したそっくりさん、あるいは誰かが変装し、錬金術を使用しているのだと思った。しかし、彼の言葉のとおり、錬成反応は無い。

エドワードとアルフォンスは、たまらずアイザックの偽物のほうを見る。偽物も、エルリック兄弟のほうを見つめ、不気味な微笑を浮かべている。

エドワード「あんた、いったい何もんなんだ?錬金術師じゃなければ、あんたはどうやってあんなことが出来るんだ。」

偽物は微笑ながら口を開く。

?「オホホホホ。私が何者か、知りたいのですか。それならば、教えて差し上げましょう。私の名は『ゲマ』。『光の教団』という宗教団体の幹部の一人です。」

ゲマと名乗るその男から、激しい光が包み込む。四人は目をつぶり、目をそむけた。やがて光が収まると、不気味な魔術師が姿を現わしたのである。

ゲマ「やはり、慣れないことをするものではありませんね。普段は、水を操ったり、氷を操る魔術よりも、炎を操る魔術のほうが得意ですからね。」

私は、ゲマのほうを鋭い目つきで見る。辻谷君も、武器を構えたまま、いつでもその木刀を相手にたたきつけられるよう準備をする。エルリック兄弟は、今までの状況がうまくつかめていない状況だ。二人が信じてきた科学以外の存在が、間違いなくそこにいるのだ。特に、兄のエドワードはショックが大きかったようだ。

しかし、エドワードはショックをも上回る怒りの感情のほうが強かった。

死者を愚弄する行為だからである。少なくとも、アイザックは国を思っていた。そして行動した。その分、心の中でうまくまとまったからだ。

だが、相手は『外道』である。短気であり、正義感の強い彼はゲマをボッコボッコにしてやるという気持ちが次第に強くなっていく。

エドワード「…おい」

彼はゲマのほうを向いた。が、頭は下がっている。

ゲマ「どうしました?」

慇懃無礼な態度でゲマは返す。エドワードはまだ頭を下げている。

エドワード「あんた、なんでこんなことをしたんだ?」

彼の声は怒りで震えている。しかし、ゲマは高らかに笑いながらこう返す。

ゲマ「オホホホホ。己の欲望のためですよ!」

ゲマは、このようなことを言って全く罪悪感を感じないのだろうか。いや、この男は『元々の世界』で悪逆非道を働いた男

だ、そんなものは金輪際持ち合わせて等いない。 そのような調子で彼は話を続ける。

 ゲマ「おっと、欲望というと語弊があるのかもしれませんね。私は自らの主のために、様々な者たちと連携して『崇高』な目標のためにやったことです。」

エドワードは、その言葉に怒り心頭になった。ついに、感情が噴き出す。

 エドワード「崇高だと…、これのどこが崇高な理念だ!!あんたらみたいに人を踏みにじって好き放題やることのどこが崇高だ!!そいつを欲望っつうんだよこの野郎!!!」

そのままの怒りにまかせ、勢いでゲマにとびかかった。アルフォンスは兄を制止しようとするも、時すでに遅し、ゲマはエドワードに素早く対抗した。

 

 エドワード「そんな貧弱じゃ、勝てないぜ!」

彼は素早く両手を合わせ、自分の機械鎧を鋭い刃物に錬成した。彼は、相手の懐に飛びこもうとしたが、相手も上手である。長いローブの下に、大鎌を仕込ませていたのだ。

見た目によらず、武器の扱いにも長けていたのだ。

私は現状を打破しようと術で対応しようとする。呪文を唱えたまではよかったが、ゲマは対策済みであった。

 

ゲマ「甘い。甘いですよ。」

何かが反射した音がすると、自分のかけた呪文が跳ね返ってきた。私はとっさによけたため、大事には至らなかった。

 辻谷「もっさん!大丈夫か!」

 山本「ああ、大丈夫だ、奴には魔術は効かないようだな。」

 ゲマ「奥の手はかくしておいて正解でしたね。私の『マホカンタ』が効くということは、あなたも錬金術を使っていないということですね?」

その言葉に、エルリック兄弟は再び驚く。彼は今まで錬金術師と思っていた、いや、私がそう思い込ませるよう演技をしていたのだが、限界が来たようだ。

 

アルフォンス「じゃあ、やっぱりあなたたち二人は本当に…」

エドワードはまだ理解できていなかった。いや、そんなことがあり得るのかと思ってしまい、思考が停止したというのが正当だ。

 仕方ないだろう。今まで信じていた『科学』以外のものを目の当たりにしたのだから。

しかし、驚く暇はない。相手は容赦なくこちらに襲い掛かってくる。大鎌は、空気を切りながら容赦なくエドワードに襲ってくる。

私もじっとはしていられない、そろそろ作戦を実行してもよい頃合いである。

 山本「そろそろだな。」

私は敵に気づかれないよう、エド以外の二人に合図を出す。辻谷君はそれに従い、動き始める。

彼は、エドのもとへ駆けつけ、援護を始めた。

 辻谷「あぶねぇぞ、少年。そんなんじゃ、あいつには勝てねぇぞ。」

 エドワード「…!あなたは」

エドワードは、辻谷の声をきき、相手との間合いを開ける。

 辻谷「そのままぼ~っとしてても敵は倒せないぜ!!」

辻谷はエドワードを鼓舞する。心を落ち着かせ、敵の顔を再び見る。依然としてゲマの顔は余裕の笑みだ。

ゲマ「おやおや、冷静さを取り戻したようですね。ですが、私を倒すのはそう簡単ではありませんよ?」

手に握られた大鎌を再びしまい、魔術で対応する態勢を取る。

魔術の錬金術が交差し、激しい火花が散る。そのすさまじさは、町中に音が響き渡るほどである。

戦いを進めていくうちに、何故彼がアイザックの術をまねできたか、エドは奴の術を見ていくうちに理解してきた。

まず、彼は『ヒャド』と呼ばれる氷を召喚する魔術を使い、再現する。次に、水蒸気は『メラ』と呼ばれる炎の呪文を用い、

そして先ほどの氷に仕掛けを施す。氷の中に炎を仕掛け、爆破させていたのだ。又、『氷の息』や『激しい炎』を水蒸気が

出た瞬間に吐くことで威力を上げていたのだ。

 エドワード「確かに、それなら出来そうかもしれねぇけど、未だに魔術が存在するなんて信じられねぇ。」

 アルフォンス「僕も、初めは信じられなかったけど、現実に起こっているんだ。その現実をすべて受け入れることはできなくても、あの二人を信じてみることは出来ないかな?」

 エドワード「まぁ、今は信じてみるしか無いみてぇだしな。」

我々4人は、ゲマに対して構えを取る。作戦通りいけば、次で相手を仕留められるはず…

私は、再び爆破呪文『イオ』を唱える。

ゲマは私の呪文に対してすぐさま『マホカンタ』の呪文を唱えようとする。

 辻谷「…もらった!」

だが、呪文を唱えようとするゲマ目がけ、木刀が迫りくる…が、かわされる。

 ゲマ『ほう、そのような太刀筋では、私に傷はつけられませんよ。』 

だが、私はその一瞬の隙を逃しはしなかった。ゲマは、自分に目がけ、地を這い飛んでくる一筋の光に気が付かない!

ゲマ「しまった!」 

避けようとしたが、辻谷君とエドワードによって、街の『角』のある方へと追いつめられていたことに気づかなかった。

ゲマに私が放った『烈風魔神剣』が直撃する。

かなりのダメージを与えることが出来たようだ。ゲマは激痛のあまり立つことはできない。

 山本「こんな術、『白閃流』にはないけどね…。最近修行して『魔神剣』を改良してみたけど、中々の威力だったみたいだな。」

私の右手には、25世紀でも数少ない武器、ライトサーベル『白閃』が握られ、白く輝いている。

エルリック兄弟は再び驚いた。今度は光輝く剣が現れた上に、その剣を地面目がけて素早く振ると、衝撃波が

輝きながら敵を目がけて言ったのだから。この『魔神剣』という技だが、私のは地面に剣の先をわずかに擦って、火花を利用し火力を上げてはいるので

少々技名が異なっている。留意されたし。

 山本「さてさて、追いつめたぞゲマ!そろそろ観念するか?」

 ゲマ「…仕方ありませんね、観念する…わけありませんよ。」

…そう、そのまま観念すればもちろんこの仕事は半分終わったようなもんだが。上のほうから機械音がした瞬間

簡単には終わらせてくれないなと察しがついた。上から二体の『キラーマシン』と『機動兵器8型BIS』が現れ、

ゲマを守るように我々の目の前に立ちはだかる。

 キラーマシンA「モクヒョウ ヲ カクニン ハイジョ イタシマス。」

 キラーマシンB「オナジク ハイジョ イタシマス。」

赤く光るその目はこちらを睨みつける。『BIS』もこちらを虎視眈々と狙っている。

予定では、そろそろスコールと孫一が駆けつけるころだが、相手はお構いなしに容赦なく襲いかかってくる。

そしてようやく先ほどの爆発へとつながる。我々六人は、マシン兵器からあわてて逃げる。

結局、作戦は失敗である。しかも、ホークアイ中尉のもとへ余計なお土産を持ってきてしまうおまけつきだ。

中尉は我々の様子に気づき、何かあると判断した。

 ホークアイ「…あれは、敵の兵器か! 全部隊に告ぐ。鋼の錬金術師とその周りの方々をお助けします。援護射撃の準備!」

近くにいた部下がキラーマシン達にむけ一斉射撃を行う。だが、相手は全くダメージを受けていない。キラーマシンが右腕に持っている刀で銃弾を次々に切っていく。

中尉達は再び射撃準備を行い、再び銃弾が口火を切る。

その間に、東方司令部からフュリー曹長が援軍の第一舞台として駆けつけた。彼は童顔であるためやや幼く見える。軍人としては頼りなく見えるもののメカには非常に強い。

まさに、マシン兵器相手にはうってつけの人物だ。

フュリー「中尉!!ご無事でしたか。」

自らもライフル銃を持ち、敵に向かって銃口を構えている彼女のもとへ駆けつける。

 ホークアイ「フュリー曹長、今は話をしたいのですがこの有様です。手短に報告お願いいたします。」

 フュリー「はい!それで、敵の弱点について簡単に報告します。大きな新型兵器の横にいる兵器の弱点は、三本の足です。そこを目がけて狙ってください。

それと、バズーカ砲をお持ちしましたので是非使用してください。」 

 中尉は「了解しました」と手短に返す。我々も、敵の攻撃やら銃弾に気を付けながら無事に軍の人たちのもとへ逃げ切った。

 

スコール「…とりあえず、約束通り援軍に駆けつけたが、―これは一体どうゆうことか説明していただけますか。」

若干呆れ気味に、そして「また面倒な」と思いながら辻谷君に話しかける。

辻谷「いや、それは、その、おいもよく分からんですたい!」

何故か彼は出身である鹿児島弁で喋りだす。思わず方言が出てしまったのだろう。

 

 孫一「いやっ、ワカラネェはねぇよ、薩摩弁の兄ちゃん。こんな状況は仕事の説明になかったはずだぜ?」

そんな孫一に答えを出す前に今度は、

 エドワード「なぁ、辻谷さん。さっきから思うんだけど…この二人は、誰?」

と間髪入れずに質問を投げかける。そしてまたすぐに孫一は

 孫一「なぁ、説明してくれよ。内容によっては金はさらに追加してもらうぜ?」

と続ける。ついには、

 エドワード「一体この二人は誰なんだ!」

 孫一「なぁ!」

 エドワード「頼むから」

 エド&孫一「説明してくれよ!!」

と辻谷君に迫った。その三人に、近くにいたアルフォンスは恐る恐る話しかける。

 アルフォンス「あの~、すみません!!お取込み中失礼し…」

エド&孫一「何!!」

「ひいいぃぃぃいいい!」と叫び声をアルフォンスであったが、彼は話してはおかないことを『勇気』を振り絞って話し始める。

 アルフォンス「あの~、僕の指差す方向見て頂けませんか?」

三人は、怒気を隠さないまま彼の指差すほうを見ると、…ビームが飛んできた。

 エドワード「いやっ!飛んできたって、なんかやっべぇのが飛んできた。」

 辻谷「げぇ!避けきけれねぇ!」

 孫一「うわっ、もうだめだ。せめて死ぬ前に美女に膝枕してもらいたかったぜ。」

と泣き言を吐いている中、四人は覚悟を決める。

…しかし、結論からいうと死なずに済む。スコールと私が、ビームを剣でぶった切ったからだ。

 スコール「やれやれ、そんな無駄話をしている暇はないだろ。」

とはいうものの、四人はお経を唱えるら十字を切るやら踊るや黒田節を歌うはめちゃくちゃである。

 

 孫一「いや、一応顕如さんから教わったお経を…」

 エドワード「いや、なんだか知らないけど体が勝手に…」

 アルフォンス「僕も死ぬ前に神頼みをしたくなって…」

 辻谷「なんか黒田節っていい歌だなぁ~って思って。酒は飲め飲め言うし。」

その台詞をスコールの横で冷静に聞いていた私は突っ込みを返す。

山本「いやいやっ、それはおかしいだろ。特に一番最後の人!どういうことだよ。」

辻谷「いや多分、ホ○だからじゃないですかねぇ…」

関係ない!!私どころか周りも呆れている。特にホークアイ中尉は頭を抱えて呆れ返っている。勿論、九割がた辻谷君のせいであるが。

とはいえ、こんな時にボケをかませる辻谷君はある意味で大物だ。まぁ、後々出てくるが、彼の友人と師匠、そしてその家族はかなりカオスであるということを

思い出す。そんな中、スコールは冷静だ。実を言うと、スコールは敵のうち一体とすでに交戦したことがあるからだ。スコールは私に

スコール「…さて、そろそろあいつらと決着をつけたいのですが。どうしますか?」と問う、その言葉に私はもちろん承諾する。

山本「そうだな、いい加減あのマシーンと決着をつけたい。鋼の兄弟と孫一さんは後方援護を。辻谷君は我々の援護を頼む。

その言葉を聞くなり、四人は「あっ、はいっ!手伝います!」と冷静さを取り戻し、軍の人たちの加勢に行く。

私は愛用の武器、『白閃』と呼ばれるライトサーベルを構える、と同時に、スコールも『ガンブレード』と呼ばれる銃の形をした特殊な武器を構える。ホークアイ中尉は、エドワード達から情報を聞き、我々の背後で様々な細かい指示をアメストリス軍の人たちに出す。

しかし、敵も強すぎるといっていいほどだ。こうしている間にもバリケードを築いた軍百人相手に互角、いやそれ以上の強さを誇っている。

それを打ち倒すというのだ。だが、私には勝機はあった。先ほどの作戦の失敗をここで晴らすにはうってつけの相手である。

まず、先制は鋼の兄弟からである。

 エドワード「おーい、ここまで気やがれ三本足野郎!」とキラーマシン一体に挑発を仕掛けた。キラーマシンは言葉に反応し、攻撃を仕掛けようと、三本足と

赤く光る眼をエドワードに向ける。だが、キラーマシンは弟のアルフォンスに気づいていなかった。アルフォンスは地面に向かって錬金術を仕掛ける。

すると、地面は手の形に変え、キラーマシンの足に絡みついた。こうなれば、動けないキラーマシーンを倒すのは容易い。

『白閃』、というよりライトサーベル型の武器は、25世紀末にも殆ど存在しない武器だ。しかも、切れ味は軽めの刀剣類よりはるかに良い。流石にSF映画のようにレーザーは跳ね返せないが、チャンバラはできるので中々よい武器である。キラーマシンは火柱を上げ、金切声のような金属音を立て真っ二つに切断された。残るは、残りの二体である。引き続き、エルリック兄弟と孫一は敵を引き付ける役を続けている、次は、孫一と辻谷君の二人だ。こちらも、キラーマシンを相手にしている。交戦している辻谷君は、相手の出方を見つつここはあえて防戦に徹している。

二人は、敵が見せる一瞬の隙を見定めている。右手に刀を、左手にはボーガンを備え、赤い目を輝かせながら相手の目、喉、心臓を狙う殺人マシーンは攻撃の手を緩めようとはしない。こちらが気を抜くと、一瞬で殺されることは間違いないだろう。辻谷君は、示現流の誇りにかけて機械相手に負けるつもりは一切ない。激しい猛攻に耐えた彼は、敵と距離を開ける。その距離は、自身が持つ木刀の届く範囲内だ。

そして、いつになく真剣な彼は示現流『蜻蛉の構え』を取り、あろうことか、敵に話しかける。普通ならキラーマシンは一見隙だらけの彼を確実に殺そうとするだろう。

しかし、キラーマシンのプログラミングは彼の構えを読み取り、静寂を保つ。こちらが仕掛ければ、返り討ちになるとそう判断したのだ。

二人が狙った敵の隙というのは、まさにこの間合いだ。上手くいけば、キラーマシンを『二の太刀いらず』といわれる斬撃が飛ぶのだ。

 孫一は、その戦況を銃を構えながら真剣に見つめる。もしも、辻谷君がしそこなえば自分がこの銃で撃つ。そんな彼の近くに、彼が好きそうな金髪の美人さんが

ライフルを持ち、彼の横でそれを構える。ホークアイ中尉だ。

 孫一「おっと、美しい御嬢さん。兄弟の手伝いは終わったのかい?」

 ホークアイ「ええ、先ほど一体を撃破したようです。」

 孫一「へぇ、そうかい。それはよかった。これなら、あなたをお誘いしてゆっくりとお茶できるかも…」

などと、きざっぽく決めようとしたが、ホークアイ中尉は

 ホークアイ「いえ、そのような時間はありませんので。」と即答する。

孫一は肩をすくませながら「だろうな、あんた結構固めだから、俺みたいなやつとは合わんだろうさ。」とぼやいた。

横の兵士からも失笑が漏れるのが聞き取れた。だが、そんな彼に中尉は。

ホークアイ「いえ、先ほどの真剣な目つきと集中力、並みの人では出せないものです。」

その言葉を聞き、孫一は少し驚く。予想外の気遣いだったからだ。孫一は、相手の気持ちを受け取り、再び敵に標準を定める。

ただ、先ほどと違うのは、二人以外にも銃を構えている部隊が増えたということだ。

まだ一人と一体は動かない。その静寂を破ったのは辻谷君である。

一体何を思ったのか、敵を見つめたまま何を思ったのかキラーマシンに話しかける。

 

 辻谷「一撃を放つ前におまはんにいいたいごとがある。」

その言葉を聞いているのかどうかは知らない。いえることは、キラーマシンは依然として動かないという事だ。あたかも、彼の話に耳を傾けるかのように。

その光景を見ている兵士たちは、当然困惑する。あいつはアホなのかと普通なら思うだろう。しかし、彼の体からは言いようのない威圧感を感じる。

孫一や中尉、そしてあたりの兵士も十分それを感じ取っていた。おそらく、あのマシーンとの決着はもうすぐ終わる…。そして再び辻谷は口を開く。

辻谷「いくら木刀といえど、おんしの体は真っ二つになりかねんが、よかでごわすか?」

相手は、おそらくその言葉を受け取ったのだろうか、右手に刀を構える。再び訪れる静寂の時が終わり時、決着が着いている。

その場にいる全員は、わずかな瞬間も逃すまいと気を張り詰める。そして…ついにその時が来た!!コンマ秒単位で先に動いたのはキラーマシンだ。

無駄のない、ただ一直線の横薙ぎは確実に相手の命を真っ二つにするのには十分である。しかし、辻谷君の斬撃は機械よりも早く、そして正確に相手の頭上目がけ飛ぶ。だが、キラーマシンは、そこまで予測していた。相手の太刀をかわしてしまえばもう終わりだ。恐れのない殺人マシーンは、ただ相手を殺すのにどうすればよいかだけ考える。右手はフェイク、左手から発射されるボーガンこそが本当に命を狙っていたのだ。これで確実に相手を仕留められる…

そのはずであった。辻谷示現流は、過去の示現流をさらに進化させた未来の示現流である。彼の四代先祖に当たる辻谷広重『つじたにひろしげ』は、その

身体能力を活かし、唐竹切りから横薙ぎへ移行させる技を作り出したのだ。キラーマシンは、勝ったと思ったであろうが。しかし、その瞬間鉄屑になっているとは

思わなかったであろう。こうして、二体のキラーマシンは無事に打ち倒し、百人の兵士の士気は格段に上がった。

孫一「ちくしょー!!。あの兄ちゃん、いいとこ持っていきやがったな。」

中尉も、先ほどからの固い顔から、安堵の表情を浮かべる。

ホークアイ「ええ、我々がかなわなかった相手をあの方々はやってくれました。一体あの方々は…」

このように、安堵している暇はすぐに終わる。後一体、一番厄介な兵器が残っているのだ。

戦いを終え、二人のもとへ帰ってくる辻谷と二人へ、フュリー曹長が駆けつける。

フュリー「みなさーん!」と大声をかける彼に

辻谷「どうかしましたか?」と尋ねようとする。だが、ふと空を見上げると敵からの砲弾が宙を覆っていた。「伏せろ!」ととっさにいうものの、すでに手遅れ、

辺りは弾幕のように飛んでくる爆風に見舞われ、四散した。

四人は、無事に避けたが、負傷した将兵もいるようだ。

ホークアイ中尉はこの状況に対し、「一体何が起こったの?」と曹長に質問を投げかける。

フュリー「はっ、はい!それが、突然敵の兵器一体が突如動きを変えたのです。」

辻谷は、すぐにその言葉を聞き「そうか。どうやら敵さん本気になりやがったか…」とつぶやいた。

その敵と対峙していたのは、私とエルリック兄弟、そしてスコールを含めた四人である。この『機動兵器8型BIS』は、キラーマシン二体を倒すと本気になるよう

プログラミングされていたのだ。

アルフォンス「駄目だ、さっきと全く動きが違うよ!」

山本「全くだ。こいつはそう簡単には倒せそうもない。」

スコール「だが、俺たちはあいつをやらないと先には進めそうも無い。…奴を倒し、道を切り開くだけだ。」

残る敵は一体。軍師団に匹敵するマシーンは、我々を狙う。その様子を高みの見物しているものがいるとは知らずに…。