第一章 さまよえる者たち7

エルザ「あれはつい先日のことだ。私はいつものようにギルドの仕事を終えて帰宅の途についている途中だった…。」

 彼女からしたら、本当につい先日のことである。我々のいる世界とは違い、魔法の発達した世界。そこには、【フィオーレ】という王国が存在している。とは言え、それ以外は、我々の世界とかなり似ている。魔力を持っているものは国中にわずか一割しかいないからだろうか、魔力を持たない一般市民は我々と似たような生活を送っている。

 そんなフィオーレに、一つの魔導士ギルドが存在する。その名は【フェアリーテイル】という。毎日にぎやかしいのが特徴で、ほかの魔導士ギルドからもかなり名の通った存在だ。

 彼女は、その中でも【S級魔導士】と呼ばれる超一級の魔導士だ。そのためか、【妖精女王】と言われている程有名人でもある。私からすれば、【妖精】というよりも、キャラクターが【巴御前】に近い気がしなくもないが…

 

 少し話がずれたので話を戻そう。彼女がギルドに戻る途中の話である。

エルザ「さて、元に戻らなくてはな。少しばかりやりすぎたが、これぐらいやればもう盗賊たちもこの村を襲うことはないだろう。」

 …まぁ、私が後から調べたらところ、少しどころか、盗賊たちがすくっていた山が【禿山】、いや、【焦土】と化していることには目を瞑ろう。そんなことを考えながら森の中を通る途中、突然彼女の目の前に炎の塊が宙を舞い、彼女を襲い始めた。

 エルザ「…これは!」

 エルザは間一髪、炎の直撃寸前にかわす。すぐさま、彼女は炎が出現したあたりを見回し、そこから何者かの気配を感じ取った。

 エルザ「そこにいるのは分かっている。おとなしく出ろ!」

 彼女は、先ほど着ていた服から一瞬で鎧に着替える。これが彼女の【換装】魔術。戦況に合わせ、魔法の力でさまざまな鎧に換装するのだ。ちなみに、彼女曰く、いくつ装備しているか把握していないほど多いらしい。いま、この状況で彼女が換装した鎧は【天輪】という名前である。彼女は、鎧とともに呼び出した無数の武器を気配のするほうに、魔法の力で一斉射出する。すると、射出された方向から何者かが宙を舞いながら現れた。

 

?「オホホホ。成程、宙に舞っている武器を相手に繰り出す魔術というわけね…。まぁ、どっかの金ピカ鎧さんの技に比べたらかわいいもんよ。」

 茂みの中から現れたのは男だ。とはいえ、独特のオカマ口調をしたこの男はとても人とは似つかぬ容貌をしている。翼竜、またはドラゴンのような翼が生え、目が三つあるからだ。男は、威圧的な態度をエルザに対して取り、余裕の表情を浮かべる。謎の男

 エルザ「なに!すべて躱わしたというのか!」

 驚くエルザを尻目に不敵に笑う男。あたかも、見下した態度で彼女に語り始める。

 男「何ともないわよ。この【デミーラ】からしたらしょぼいものね。人であるあなたの攻撃ぐらい、簡単に見切れるわよ。」

 デミーラと名乗る男はあっさりといい放つ。