第一章 さまよえる者たち 10

ほかの二人も同様に驚く。今までのシリアスはどこへ行ったのか分からない状況になった。

 辻谷「失礼します、山本次官はいらっしゃいますか?…」

と連絡をとる辻谷クン。そのあとすぐ、私に無線電話がつながった。

 辻谷「はい、モッさん。お疲れさん…ていうのはまだ早いかな?…うん、そうなんだけど…」

会話中の音声は二人にしか通じないようになっているため、周りは我々がどのような話をしているのか推測するのみである。この無線、受話器がないのにこのようなことができるのも、ひとえに科学の力だ。

 話が終わり、辻谷クンは電話を切ろうとするが、宇和島君が辻谷君の横から子犬のような目で変わってほしいという表情をしていた。

 辻谷「…変わるかい?」

彼女は首を縦に2・3回振ると、タッチパネルの前に立ち、私と会話を始める。

 宇和島「次官さん!大変です!!めちゃいかないおとろしいことがわかりました。」 

ちなみに最後のほうは伊予の方言で【とてもよくない恐ろしいことがわかりました】という意味である。思わず方言が出たようだ。私は彼女に落ち着くよう自制を求める。

そんな私は辻谷クンとはなしをしていた時は、紅茶を飲みながら【ヴィジョン】というシステムを用いて無線電話を使っていた。これはどういうシステムかと簡潔に説明するならば、辻谷クンのは未来のスマホ。私のは未来のパソコンだ。この時代になると、両者とも【本体】は不必要。すべて【ヴァーチャル化】というもので統一されている。

さて、彼女の話を聞くため、私はトレンチコートを両手で直し、話を聞く体制をとる

 山本「一体どうしたというんだ?落ち着いて話してかまわないよ。」

そうすると、彼女は少し深呼吸をして話を再開する。

 宇和島「はい、えぇ…と!そうです!あの仮面の男が現れたようです!!」

 私はその言葉を聞き、驚く。ついにあの謎の男が活動を再開するということだ。ここで、私は彼女に落ち着いてもらうよう

丁寧に話しかける。

 山本「そうか、あの男、ついに動き出したか!それで、誰のはなし…」

話なのかと私は聞きたかったが、突如、凛とした声が無線電話から聞こえる。

 エルザ「それは私の話だ!良ければ、私が話しても構わないか?」