第一章 さまよえる者たち 15
仮面「仕方があるまい。【エルザ・スカーレット】お前は今から精神世界で、地獄を味わってもらおう」
エルザは仮面の男が鋭い目つきでこちらを見たところまでは覚えている。だが、彼女は気づくと今までいた景色とは違う場所にいた。ここは自分の所属しているギルド、【フェアリーテイル】ではないか!
エルザ「…いったいどういうことだ?いつの間に戻ってきたというのか?」
そう戸惑う彼女に一人の小さい老人が声をかける。ここのギルドマスター【マカロフ・ドレアー】だ。
マカロフ「どうしたんじゃエルザ?早う中に入れ、皆が待っておるぞ。」
エルザはギルドのほうを見ると、そこにはギルドの仲間が大勢待っている。
エルザ「みんなっ…」
彼女はギルドの皆のほうへ駆けだそうとした。しかし、それは一瞬の出来ことである。
ペイン「では、貴様には地獄を見せてやろう…」
いつの間にそこにいたのだろうか、あのペインはギルドのある建物の真上、宙を浮かんで見下ろしているではないか!
ペイン「これがわが神の力、【神羅天征】だ!」
…いったい何が起こったのだろうか。エルザはうつ伏せになって気絶していたようだ。彼女はあたりを見回すと、そこには瓦礫の山しか無い。それに、【フェアリーテイル】がある街、【マグノリア】もなくなっている。
エルザ「こっこれは…そんな馬鹿な!」
エルザは遮二無二町中を走り回ったが、そこには塵芥しか存在しない。そして、多くの死体が転がっているのみだ。
エルザ「そんな…、誰か、誰かいないのか…っ」
彼女は気が狂いそうになった。いや、もしかするともう狂っているのかもしれない。彼女は再び、フェアリーテイルのあった場所に戻る。瓦礫を必死にどけながら、ギルドメンバーの名を口に出す。
エルザ「マスター! 【ナツ】!! 【グレイ】!! 【ミラジェーン】!!! 【ラクサス】!! 【ウェンディー】!!」
しかし、そこにあるのは、死体という絶望であった。その様子を彼女の背後から見つめるものがいた。仮面の男だ。
仮面「お前には絶望を味あわせてやった。もうどこにも帰る場所は存在しない。そう、お前には俺たちと来るしか道はないというわけだ。」
仮面の男は彼女に近寄り、そっと手をかける。エルザは茫然としたままだ。そして、男は彼女を導くようにこう囁いた。
仮面「俺とともに来い。そうすれば、皆を行きかえらせることがペインにはできる。約束しよう。」