第一章 さまよえる者たち 16

 エルザは、男の手を取ろうと手を差し伸べた。いや、【そ う し た ふ り を し た】。仮面の男には、剣が突き立てられ、そして、貫通したのである。

 エルザ「残念だったな。【幻術】この私をはめようなどとは、考えが甘かったな!私の片方の目は【義眼】で、幻術は効かんのだ。」 

 仮面「ほう、俺の【万華鏡写輪眼】の力、【月読】が効かんとは、大したやつだ…だが…」

突き刺したはずの剣は、仮面の男の体をすり抜け、足元に音を立てて落ちるのみだった。

 仮面「そちらも、爪が甘かったようだな。」

エルザは、いったん後ずさりをする。剣が体を突き抜けるという、聞いたこともない光景を見せつけられた彼女がとった行動は、いったん間合いを開けることであった。

 エルザ「これは…、驚くほかないというわけか…。」

仮面の男は余裕を見せる態度で彼女を見る。

 仮面「まだまだ若いな、娘。世の中にはお前の想像を超えるものがまだいることを忘れてはならん。貴様はなんとしてでも【あの場所】に連れていく。力ずくでな!!!」

 エルザはその言葉に対して「そうか…それなら!」

エルザは、そのまま時空の裂け目に移動し、【天輪の鎧】に換装したのち、そこへめがけて剣を射出する。

 エルザ「まずは、これを破壊するほかなかろう!」

しかし、これが彼女がこの時代に来た原因となる。時空の裂け目はさらに歪になり、彼女を吸い込み始める。

 エルザ「なっ…これは!!」

 デミーラ「あら、残念なことをしてくれるじゃない!あなた、このままだとまったくわからないところに飛ばされるわよっ…てもう遅いわね。」

 そのとおり、もう遅かった、彼女はそのまま時空の裂け目に吸い込まれ、元いた世界から抹消されることとなる。