時空省外伝!辻谷広行の休暇7

ハーメルはその言葉に何も返さなかった。いや、返すつもりは一切ないというのが正確だろう。用は呆れているのだ。

 スコール「さて、あの二人は放っておいて…さて、俺は道場の中に入らせてもらうとしよう。ハーメルさんも、早く。」

 ハーメル「それじゃあ、俺もそうさせてもらおう。あのテンションにはついていけんよ。」

そうして、二人は辻谷家の実家兼道場の中に入る。中はかなり渋めの装飾が飾られており、息苦しくなりそうな雰囲気を漂わせている。とは言え、そんな空間は広行と大成の部屋のその周りのみ。しばらく歩くと、そこには立派な剣術道場があり、【棒】で何かを激しく打ち付ける音がする。

 ハーメル「今日も激しい音がこだましているな。」

 スコール「えぇ。本当にすごい練習ですよ。まさに、【実戦向き】だ。」

スコールが言う通り、示現流は【いかなる場合でも対応する】という考え方で、私服で練習してもよいとされている。それだけではない。示現流はまさに【相手を斬る】ことに特化した剣術だ。そのため練習は、まさに熾烈を極める。その上、これだけ激しい修練を行っても、示現流奥義【雲耀】を習得したのは、本家を合わせて数人しかいないといわれている。

 ハーメル「俺は、【曲】を覚えるときここまで厳しいことはしなかったな。むしろ、母さんと楽しく覚えていたぐらいさ。」

彼の言う曲とは、【魔曲】と呼ばれるものだ。意味は【魔法の曲】という意味で、彼が特大バイオリンで奏でた曲は、魔力を持つのだ。彼の母である【パンドラ】が、彼の子供の時に教えてくれたのだ。どういう効果があるのか説明すると、【行進曲】を弾くと行進したくなり、【エレジー】を弾くと敵が悲しみに襲われるという具合だ。

 スコール「確かに、曲を覚えるには心から触れ合う必要がある。すなわち、楽しく覚えるのが一番だ。しかし、ここはまさに戦場だな。」

そんな堅苦しい話をする二人の後ろには、道場に入ろうとしてなかなか入れない女性がいた。

 ?「あの~、お二人さんすみません。」 

申し訳なさそうに声を出す、白い肌にショートへアー、そして白い着物を着ている儚げな雰囲気の女性【辻谷 ゆす】は、ハーメルとスコールに用があって道場に顔を出したのだが、なんだか難しそうな話をしているのでなかなか入れずにいた。 

 スコール「ん?あぁ、あなたは【広行】の妹さん。今日もお疲れ様です。…って、ハーメルさん?あなたは何をしているのですか?」

 ハーメルは何を考えたのか、【ゆす】の頭をかなりの力でガシっとつかんでいる。何、気にしてはいけない。この行動はなりの彼の照れ隠しだ。このハーメルという青年、時折【凄まじい行動】にであることがある。皆々様は大目に見てやってください。だが…

 ゆす「痛いです、やめてくださ~い!」

彼女はかなり迷惑そうだが…、でもやっぱり気にしてはいけない。照れ隠しだから。