時空省外伝 辻谷広行の休暇 17

 だが、その幻想は見事にぶち壊されることとなる。ことの次第は、これから述べるとしよう。敵の近衛兵である【生きた鎧】、リビングアーマーは、何者かの気配を感じ取ったところから始まる。

 アーマーA「む、今何か気配がしなかったか?」

 アーマーB「確かに、何か気配がしたな。うん?なんだあれは。」

二人は、遠くから何かが飛んでくるのを見つける。それこそまさに、マリク教官の飛刀である。その光景を茂みから見ていたハーメルは、彼の胆力に感銘を受けていた。

 ハーメル「ふっ、俺が人に感銘を受けるとは、珍しいことも本当にあるもんだな。」

ハーメルの目線の先の男は、ただただ落ち着いて敵のみを見ている。ハーメルは、彼に対して妙な安心感を覚える。

 アーマーB「ぬっ!あれは敵の武器か!ふもとが騒がしいと思ったら、やはり敵がいたか!」

 アーマーA「クソッ、どこにいる!」

飛刀が飛んできた方向を見つめると、そこには腕を組み、仁王立ちをしている教官の姿があった。

 アーマーA「いたぞ!あそこだ!!」

 アーマーB「おい!そこのお前!持っている武器を捨てろ!!」

教官は、片手に持っていた武器をその場に投げ捨て、抵抗しないそぶりを見せる。

 ハーメル「おいおい、大丈夫なのか?あのままだとやられちまうぞ」 

彼の考えている通り、リビングアーマーは教官のほうへ向かっていく。

 アーマーA「おいおい、仁王立ちなんてして何考えてやがる。」

 アーマーB「さあな。ん、なんだ?何する気だ?」

それは一瞬の出来事であった。教官は後ろを振り返るや否や、奥義を繰り出した。

 教官「漢なら!背中で語れ! マリクビイイイィィィィイイイム!!」

その言葉と共に、リビングアーマー2体は脱落した。

 ハーメル「なんだろう。期待した俺が馬鹿だった。」

そうして、ハーメルの考えていた教官像は崩壊した。

そんな一方、すごい漢協会創設者である【不破 刃】師範は、さらに敵をおびき寄せるため、自ら出陣を始める。