二章 導入 Drăculea Vlad Ţepeş【ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ】4
志貴「やはりそうか。結構若く見えるけど、もう立派な社会人なのか。イケメンはいいなぁ。」
この言葉を聞いて一人ものすごい反応を見せる人がいる。アルクェイドそのひとだ。
アルク「そんなぁ~。志貴も結構イケメンじゃない!!」
やたらお惚気気味になっている彼女はそのままの勢いで志貴にとびかかる。
志貴「やだな~、アルクェイド。突然抱き着いたりして!」
アルク「いいじゃない!これぐらい。」
志貴「やめろよ、こんな人前で。恥ずかしいじゃないか!」
二人はなんだかんだ言いあいながらじゃれあっている。その光景を有角も当然見つめていた。ただ、ほかの人とは違い、何か真実を見極めようとしている目で…。
そんなじゃれあいを2~3分し続けて、やっと終わりを迎える。志貴はぜぇぜぇ言いながらアルクエイドのほうを向いて
志貴「あぁ、まったく君は。まぁ、そのほうが君らしいけど。」
と話す。不思議とその顔は楽しそうだ。一方で
アルク「あら、そうかしら!」
と返す彼女の声はかなり嬉しそうである。二人で若干気持ちのずれはあるが、幸福であることは変わらないであろう。
志貴「…ん?そういえば、有角さんは?もう帰っちゃったのか。」
その言葉に、アルクェイドもあたりを見回すと、彼の姿はもうなかった。どうやら、先に帰ってしまったのだろう。
アルク「そうみたいね…。あの人、いったい何だったのかしら。」
志貴「そうだね。まぁ彼がいなくなって、僕としてはよかったけれどね…」
なぜか志貴はそのようなことを口走る。アルクェイドは一瞬なぜそのようなことをいうのかよくわからなかったが、何かの間違いだろうとはじめは考えた。
アルク「あ、もうこんな時間!私たちも帰らなくちゃいけないわね。」
志貴「…いいじゃないか、まだ帰らなくて。」
アルクェイドは、その言葉を聞いてなぜかぞっとする。いつもなら、すぐに帰ろうと言い出すはずなのに、いつもと違う返答が帰ってきたのだ。一体どうしたのか、彼女ははじめ彼を疑ってはいけないと考える。
アルク【なぜかしら…、いつもと雰囲気が違う。まさか、志貴は志貴だし、別人になったわけじゃないわ。】
彼女は、いつも彼と会話するように会話を続ける。
アルク「あれ?いつものあなたなら違う返答をすると思っていたのに。」
志貴「まぁ、たまにはそういうこともあるということさ…。」
彼の声を聞いた彼女はさらにぞっとする。やはりどうもおかしい。この人は、本当に彼女の知っている【志貴】なのか…。
疑いは疑いを呼ぶ。彼女の【吸血鬼】としての、人間離れした能力が彼の…いや、彼に【化けた】何者かの本性を暴きたがっている。