二章 導入 Drăculea Vlad Ţepeş【ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ】5

 アルク「ねぇ志貴、そういえば、さっきベルモンド一族が数百年にわたって、ドラキュラ伯爵と対峙し続けているってなんで知ってるの?」

その言葉をきいて、志貴の皮をかぶった【何者か】は、

 志貴「いや、さっきその本の年表に書いていたのがちらっと見えてね。」

と冷静に答えるのみであった。だが、アルクは気づいていた。彼が【遠野志貴】ではないということを。しかし、これでは決定的な証拠となるわけがない。彼女は、どうすれば【本性】】を暴けるかを考える。

そう、答えは実にシンプルだった。【初めて会ったとき】の話をすればいいじゃない!と。

 アルク「ねぇ、あなた【初めて会った時のこと覚えてる?】」

…そう、二人の出会いは実に奇妙なものだ。彼女は、はじめて彼と出会った時、【17分割】され、殺された。彼の力【直死の魔眼】によってだ。遠野という男は、実に奇妙なものだ。その容貌から想像できないものの、裏の顔を持っている。正に、裏の人格というところだろう。彼が彼女を殺したのは、彼の【血】がそうさせたのだ。

アルクはその後、無事復活し、彼と出会う。そして、彼に対して 【私を殺した責任、とってくれる?】と話したのだ。そうして現在、その責任は果たしたものの、わけあって今でもこの街【美咲町】で暮らしている。このことを彼が知らなければ、【ニセモノ】である。

 

アルク「どうやら、今の質問は結構的確だったということかしら?答えられないということは、やっぱりあなたはニセモノということね!」

 アルクエイドは、鋭い目つきで彼のほうを見つめる。もはや、その男は彼女の知っている遠野志貴とは別人だった。

 志貴?「ふふ、ふはははははは!! 成程!これはしてやられたというわけか。」

突如、遠野志貴の皮をかぶった男は大声で笑い始めた。

?「見事だ【月の姫】アルクエイド・ブリュンスタッド…。実にシンプルかつ有効的な質問よ…

遠野志貴、いや、その皮をかぶった【その男】は、低く落ち着きのある紳士的で、かつ威厳に満ち溢れている声ではなす。

 彼は、背中を大きくのけぞったり、かと思えば、前のめりになりながら手をぶらぶらさせたりし、笑い声を上げる。何とも形容しがたい、実に不気味な動きだ。そして、アルクエイドの立つところよりも向こう側を見つめ、睨みつける。

 ?「わが息子【アドリアン・ファーレンハイツ・ツェペシュ】よ。そこにいるのだろう。さぁ、父である【ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ】の前に姿を現すがよい!!」

その言葉に対し、一人の青年が、あたかも霧の中から現れるように姿を見せる。先ほど、図書館で出会った【有角】だ。

 有角「やはりあなたか、父上。滅んだはずのあなたが復活したという話を聞いてはいたが、まさか、こんな仕掛けを用意するとは…」