二章 導入 Drăculea Vlad Ţepeş【ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ】 7
アルク「お願いするっていったって、私は別にいいわ。それよりも、こんな不気味な墓場からさっさと抜け出たいって気分よ!」
ドラキュラは彼女の言葉を聞いても眉ひとつ動かさない。只々、いつものように優雅にふるまうのみである。
ドラキュラ「おっと、これはお嬢さん、なかなか手厳しいですな。安心してもらって構わんよ。私はもう【この世界でやり残したことは無い】。あとは、我が【三人の友】のため、君たち二人を【あるところへ】移動させるのみだからだ>」
アルカードは、宙を浮いている自分の父に対し剣を向ける
アルカード「あなたが何を考えているかは知らない。だが、私はあなたを倒さなくてはならないことだけは言える!」
自らの息子を見下ろすドラキュラは、目をつぶりながら嘲笑する。まるで、つまらないと言いたげの顔だ。
ドラキュラ「ほぉう!だが残念だ!!気づいていないのかね?君たちの足元を見たまえ!地獄への入り口が開いているではないか!」
その言葉に二人は足元を見つめる。気づくと、足元には暗黒空間が広がっており、体が闇に引っ張られ始めているではないか。
アルカード「…こっこれは!いったい!」
二人は必死に抜け出そうと力を振り絞るが、一切抜け出せそうにない。むしろ、振り切ろうとするほど、闇へ闇へと沈みこんでいく。
ドラキュラ「はっはっはっはっ!安心したまえ、お前たちは死ぬわけではない、私が向かおうとしている世界へ先に行ってもらおうというだけだ!君たち以外にもあらゆる時空から迷い込んでいる者たちがいるが、仲良くしてもらっても構わんよ?それに、君たちが知っている者たちもいるはずだ。再開を楽しみにするがよかろう。」
再び笑い声を上げる彼の声は、墓場で大きく響き渡る。その声を聞く二人の意識は次第に遠くなり、もはや抜け出す気力は皆無に等しかった。
アルク「くっ…こ…んな…」
彼女はもう、力を出せないほど飲み込まれてしまっていた。只、彼女は心の中で、自分を救ってくれた人の顔を思い浮かべるのみであった。
二人の様子を見届けたドラキュラ伯爵は、先ほどの笑顔とは打って変わって深く考え込むような顔つきに変わっている。
?「よくやったな、西洋の魔王よ…あとは、我々も準備ができ次第【破壊】するのみとなったな。」
ドラキュラの背後から話しかけるのは、東洋の魔王【遠呂智】オロチである。彼は、闇の中からぼんやりと、そして次第にはっきりと現れ、ドラキュラの横に立った。彼もまた、アルクたちが飲み込まれていったあたりを見つめ、何かを考えるような顔つきになる。
遠呂智「お前も考えごとをしていると見えるが、どうした?」
ドラキュラ「お前こそ、らしくないのではないか?やはり、やつのことが気になるか?」