二章 導入 Drăculea Vlad Ţepeş【ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ】8
遠呂智は遠くを見つめ、物憂げな顔をする。彼が滅多に見せぬ表情だ。
遠呂智「あの【マダラ】とかいう男だろう。我とお前をよみがえらせ、何を望むのか?」
ドラキュラ「さぁ、私にもわからぬことが多い。ただ、【デスシティー】と呼ばれる場所に向かえばよいだけだ。そうすれば、人間どもを根絶やしにすることが出来る。その筈だ…」
遠呂智「だが、貴様も元は【人間】である筈だ。本当に良いのか?」
その言葉を聞いて、なぜかドラキュラは言葉に詰まる。マダラという男と、人間を滅ぼすということに戸惑いがあるのだろうか?只、彼の心の中には、ある人物が浮かんでいた。
ドラキュラ「【リサ…、完全に滅んだ私がなぜ復活したのかわからぬのだ…。今、私の心は人間時代にもっとも近い状態だ…。しかし、…】
再び鋭い眼光に戻るドラキュラ。彼は、再び自分のしもべたちの待つ【悪魔城】の城主として立つ決心をする。
ドラキュラ「わが名は【ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ】!この私が、異世界に恐怖をもたらそうぞ!!」
周囲に響き渡る声と共に、自らの体を複数のコウモリに変え、闇の中へ消えていく。その様子を見届けた遠呂智。
彼自信も、妖魔たちを引き連れるために準備をするため、自身の居城【古志城】へ向かおうとする。すると、自身の鎧の右側がなぜか震えだす。遠呂智は、自身の部下【妲己】が、【通信機】なる人間の発明を自分に持たせたことを思い出す。
ちなみに、この通信機は我々の時代より500年前、すなわち【21世紀】あたりに作られたデザインを踏襲している。だが、性能は25世紀の性能と21世紀の性能それぞれ使えるハイスペック品である。名称は【HWC】という。【HIGH WAVECOMMUNICATOR】和訳すると、高機能電波通信機。案外ストレートなネーミングだ。おそらく【マダラ】が横流ししたものだろう。 切り替え可能なのは、ほかの時代に合わせて使うためだ。
彼は、通信のスイッチをいれ25世紀用に性能を合わせる。すると、まるで映画のスクリーンのようなものが宙に現れる。
妲己「あらぁ~遠呂智様!!わたしよ~」
なんだか適当な声が通信機から声が聞こえてくる。彼女こそ、かつて中国に存在していた【殷】という国を滅ぼした元凶、紂王の后である【妲己】本人である。そして、この二人こそ、【三国と戦国を合わせた世界】を創造した元凶である。