第二章 前日13
クロコダイル「いや、やめておこう。今日はあくまでも、お前が言っていたことが本当なのかどうか確かめたかっただけだ。俺は基本的に誰も信用しねぇ性質【タチ】だが、この目で見れたというこは、ある程度は信じられるようだな。」
マダラはその言葉を聞いて、一定の評価は得られたと解釈した。資金提供者の一人であるクロコダイルの機嫌を取れたことは、暁の会計役でもあり、今回の【目的】のための会計役でもある角都にはよい知らせだとも彼は心中に思うのであった。
マダラ「どうやら、少しは信じてくれたようだ。はじめは、一戦交えなければなかなか信じていただけなかったゆえな。」
クロコダイル「あの時のことは忘れてくれや。で、【俺の部下ども】の救出はどうなっている?」
?「ふふふ、それに関しては問題無いわ。うちはマダラさん。」
二人は、背後から聞こえた声のほうを振り返る。暗がりから現れたのは、研究者の格好をした女性だ。美しい銀色の髪にスレンダーな体、そして、銀の瞳をした美人さんである。彼女こそ、謎の科学者【ゼーナ】である。
ゼーナ「私がうまいことやっておいたわ、クロコダイルさん。あなたの世界の海軍って歯ごたえなかったわね。それよりもどうかしら、【ジェノバ細胞】の力は?」
クロコダイルは、実に誇らしげに話している彼女を見ながらため息をつく。この溜息は、感動したから出たものではなく、つまらないという意味でついたものだ。
クロコダイル「あぁ、あんたの話の通りだ、実験オタクのネェチャン。…まぁ、実用化出来れば、多少の金にはなりそうではあるがな。それに、部下の件に関しては感謝しておく。」
彼は、2メートル50を超す巨体を動かし、もと来たほうへ歩き始めた。
ロード「えっ!もう帰っちゃうの!海賊のおじさん!少しぐらいこっちに声をかけてもいいんじゃない?」
ロードは来たばかりなのにとっとと帰ろうとする彼に対して思わず声をあげる。そんな彼女に対し、彼は
クロコダイル「わりぃな、嬢ちゃん。俺はやらなければならねぇことがあるからさっさと帰らねぇといけねぇのさ。」
と返した。ロードは少し不服そうな顔をしている。
ロード「残念だな~。折角あなたの世界にいる海賊がどんなものか聞いてみようと思ったのにぃ。」
クロコダイル「クハハハハハ、悪いが、泣こうがどうしようが俺は行く。詳しいことならそこの仮面の爺さんに聞いてくれ。」
そうして彼は、暗闇の中へ消え、自身のいた世界に帰ったようだ。不服そうな顔をしているロードを見て、ゼーナは、
ゼーナ「どうやら、帰ってしまったようね。まぁいいわ。また今度会えるから、その時に色々聞いたらいいんじゃない?」
と声をかける。その言葉を聞いたロードは納得してはいない表情を浮かべてはいるものの、しぶしぶうなずいた。ロードを一瞥したのち、彼女はマダラの隣に足を伸ばして座り込む。そのあと、立ったままのマダラのほうを見上げて、話を始める。その顔は、なぜか笑みを浮かべていた。