時空省 幕間編 3  D4C

 時は1890年のアメリカ合衆国。工業生産額がイギリスを抜いて世界一となり、フロンティアと呼ばれた【西部開拓時代】が終わりを迎えたころである。今回はこの国の首都首都ワシントンD.C.で起こった時空的事件である。大統領官邸、後に改修され、ホワイトハウスと呼ばれる場所に居を構える大統領【ファニー・ヴァレンタイン】はいつものように気持ちの良い朝を迎える。今日は久しぶりの休日である彼は、鏡の前でポージングをしながら、今日は何をするかを考えていた。

 ヴァレンタイン「ふむ、今日はスカーレットとレストランがいいか、それとも久しぶりに博物館へと行くか…。」

先がカールしている髪の毛を触りながら、彼はカレンダーを見つめる。色々と予定が書きこまれたそのカレンダーを見ると、どうやら、妻のスカーレットは友人と【ボルチモア】へと出かけるようだ。ということは、今日彼は一人で休日を過ごすこととなる。それでは、何か別のことをしようと再び考え始めた時、何やら大きな音が首相官邸内を響き渡った。この時代ではまだ珍しい【電話】のベルの音だ。彼は今いる【マスターベッドルーム】から、電話のある執務室、通称【オーバルオフィス】へと移動し、電話の受話器を取った。電話の相手はどうやら副首相のようだ。副首相はいつもの冷静な雰囲気とは違って、少し慌てているような雰囲気が不思議と電話越しから伝わってくる。大統領はそれを察し、相手を落ち着かせるような口調で話し始める。

 

 ヴァレンタイン「私だ。少し息が荒いが、何かしら事件でも起こったのかね?」

 副首相「はっ、大統領!それが、本日明朝アパラチア炭田で奇妙なことが起こりまして。」

 ヴァレンタイン「ほう、炭田で?副首相、詳しく聞かせてもらおう。」

 副首相の話はこうだ。時は明朝のアパラチア炭田。とある鉱夫がいつもより早く仲間たち3人と来てみると、何やら炭鉱の穴の入り口付近で何者かがうごめいているのが目に入った。気になったので、その何かに近づくと、二人の首が一瞬にして吹っ飛び、気が動転した鉱夫が慌てて逃げてきたというのだ。実のところ、このような事件が三日も起こっており、いずれも夜間に起こっているというのだ。

 

 ヴァレンタイン「…ふむ、何やら奇妙な事件だな。しかし、今まで炭鉱を今までよく封鎖にしなかったものだな。」

 副首相「それがですね、どうやらこの不気味な事件が外に漏れるのを鉱山の所有者が警戒しているのです。そのため、この事件を知っているものは炭鉱に関わりのある一部の政治家とあなたのごくわずかです。私はただ、閣下の能力で解決できるのではないかと考えたので連絡致したまでです。」

 ヴァレンタイン大統領の能力とは、この物語ですでに登場したプッチ神父と同じ、精神が具現化した【スタンド】と呼ばれるものである。この時代にもスタンド使いは存在し、大統領の彼もまた、スタンド使いであった。とは言え、彼が大統領となったのは実力によるもので、決してスタンドの能力を使ったものではない。いい変えれば、国家の主に立つ程の強靭な精神の持ち主だからこそ手に入れた能力ともいえる。