第三章 BERSERK 7

 以上で語りは終わりである。今、目の前で彼が燃えるような気で【使徒】と戦っているのはそういった理由があったからである。そして、現在彼は踏み入ってはいけない精神的境地に達しようとしていた。それは、彼のつけている鎧にすべての原因があった。

 辻谷【…いかんな。ついに、恐れていた事態へと発展してしまったということだな。】

辻谷以外も、あの巨大な怪物と戦っているものが誰であるか理解し始めたようだ。間違い無い、黒い剣士【ガッツ】であるということを。

 アタランテ「…まさか、あれは、ガッツとかいう青年なのか?」

 辻谷「あなたの言う通り、彼はあの黒い剣士ガッツだ。ただ、今の彼は元のガッツといえるかどうかは分からんがな。」

そう、今の彼は先ほどの青年【ガッツ】とはほぼ別人とい言っても言い過ぎとは言えない。彼は今、おのれの心の中に住まう【獣】に呑まれようとしていた。

 一体どうしてしまったのか。ただ、己の心の暗闇の中から、獣のうなり声のようにこう聞こえる【委ネロ…】という言葉のみしか理解でき無い。ここはどこなのであろうか?闇、闇、闇。自分がどこにいるのかは全く分からない。次第に、闇の中から何かがこちらへ向かってくる。白く、うすぼんやりしたそれは、こちらへ襲い掛かってくる。死!し!シ!死!。自分のまえに立ちはだかるそれは己にとってそういうものであることは、というよりは、そういうものでしかないと理解した。

 【喰ライツクセ…】狂戦士は、その言葉のするほうを辿る。そこに向かって、身の丈を超える巨大な剣を振り回す彼。そういえば、何故自分はここにいるのか、いや、そもそも俺とは何だったか、いや、そもそも…

 そうして、ガッツは自分の心の闇に飲まれつつあった。元はと言えば、旅先で出会った一人の【魔女】に、緊急事態のためとはいえ、進められるがまま【狂戦士の甲冑】を装備してからである。

 李「ふむ、成程。そういうわけであったか。話はあらかた理解した。…それが事実だとしたら恐ろしい程この上ない。」

辻谷、陸奥、そしてリヒターの三人は、ガッツに関する情報を簡潔に説明した。その話を理解した残りの三人は、その衝撃的な話にただ驚くだけである。