第三章 BERSERK 8
アンデルセン神父「成程、話はあらかた理解出来ました。あの鎧は、自身の能力を上げる代わりに、己の心の中に存在する【獣】に乗っ取られてしまうというわけですね?」
辻谷は、その通りと首を縦に振る。そう、あの鎧を着ると心の中に住まう【闇】の部分が表面化し、伝説上の狂戦士【ベルセルク】と化すのである。
アタランテ「ベルセルクか…。あの男がいた世界にも似た伝承があるのかは分からんが、北欧の伝説にそういったものがあるのは知っているぞ。」
このメンバーの中で最も古い時代、ギリシャ神話の時代に生まれ育った彼女である。どうやら、元の時代で話を聞いたことがあるらしい。
リヒター「ほう、あなたもご存じであるか。私も、職業柄そのようなことに詳しいのです。」
陸奥「いや、俺はあまり詳しく知らないんだよな。ま、国が遠いからなかなか聞く機会がないだけかもしれないだけかもしれないけど。」
と頭を掻きながら、少し置いていかれたような気分になった彼は困ったような顔になっている。
辻谷「心配しなくてもいいぞ、俺も知らん!」
続けざまにそう発する、まるでフォローになっていない彼のセリフはさらに陸奥を困惑させる。
?「心配せずとも構わん。【彼】を連れてきた私もまったく知らん!」
一体どこから現れたのか。我々が乗っている車のすぐ目の前に、星条旗を持った見知らぬ男がたっていた。
李「む?何者だ?いつの間にそんなところに。」
思わず構える李書文。そんな彼を制止するのは、すべてを知る【辻谷】である。
辻谷「大丈夫、彼は敵じゃない。味方です。これはこれは、古の大統領閣下。ご迷惑をおかけしました。」
大統領に気を使いつつ、一流の拳法家を自然に制する。その動作を自然にこなす彼を見て、ヴァレンタインは彼を見てふと何かを思い出す。
ヴァレンタイン「む?君はもしかして【辻谷君】ではないのかね?」
彼はふと目の前にいる【東洋人】を見て、はるか遠いところから来た友人を思い出す。そう、Mr.辻谷のことを。
ヴァレンタイン「そうか!君だったのか。ならば、あの時の約束を無事に果たせる!」
彼ら二人は、19世紀で一回あったことがあり、色々と紆余曲折を経て友人同士となったのだが、その話は又後日。読者の皆さま方は、以前何か二人の間で約束事をしたのだな、ということぐらいで理解してもらって構わない。そのほかのメンバーにも同じことが言えるのだが。