第三章 欲望の守護天使【ゴッドハンド】 1

この戦いを見ていたものは、どうやら別にもいたようである。今回の事件の首謀者の一人、【うちはマダラ】と、その協力者  【ドラキュラ伯爵】、そして、しばらく存在を隠していた【松永久秀】の三人だ。

 マダラ「…そうか、やはりあの黒い剣士が勝つか。お前のいう通りだったな、【ヴラド・ツェペシュ】。」

 ドラキュラ「あぁ。確かにあの【首のない騎士】は我ら西洋妖怪の中でも屈指の精鋭だ。しかし、あの剣を前にしてはひとたまりもなかろう。それを扱える【黒い剣士】の技量と、その武器自体の持つ【魔力】の前では勝てないことはすでに分かっていた。それだけだ。」

 その話にあまり興味を持たないのは松永久秀である。彼は、寧ろ彼の持っている【ドラゴンころし】又は【斬魔剣】と呼ばれるあの鉄の塊のような巨大な武器に関心があった。彼は、欲しいと思ったものを手に入れるためなら、どんなことをしてでも奪い取らないと気が済まない、そういう性分をしている。【伊予河野】という所に住むとある巫女曰く、常におなかをすかせている子供のようといわしめた程だ。普段、紳士的な態度をとっている彼だが、目の前に欲しいものがあると、その残虐性が表立ってしまうが、今まさにそうなりそうな状況になっていた。

 松永『あの剣、私では扱えそうにないが、もしかすると、【我友人】ならば。…面白いことになるやもしれんな。』

彼は、二人の話を聞いている振りをしていると、後ろから誰かがこちらへ駆けてくる音が聞こえた。その人物は、全身黒い服で身を包み、普段は人を見透かしたような笑みで飄々とし、あたかも道化の如くふるまっているのだが、走ってきたせいか、少し余裕のない表情をしている。その人物の名は【陳宮】。三国志最強の武を誇る武将【呂布】の軍で軍師として活躍した男である。

  

陳宮「はぁ、はぁ、これはこれは遅れてしまって申し訳ない。只今、只今呂布殿の状況をお知らせしますぞ。」

 三人は後ろからやってきた小柄な男のほうを一斉に見る。どうやら、彼らにとって朗報であることは間違いなさそうである。何故なら、少しつかれた表情をしているものの、陳宮の顔からはいつもの笑みがこぼれていたからである。

 松永「どうやら、戦闘の準備は整ったようだな。」

 陳宮「はい、その通り、その通りでございます。流石は松永殿、よくお分かりで!そうです!準備が整いましてございます。これでようやく戦いになりそうですな!」

 先ほどの疲れはどこへ行ってしまったのは、陽気な軍師はいつもの調子を取り戻し、独特の喋り方で振る舞いはじめた。

 マダラ「そうか。ついに始められそうだな。こちらはフライングをしたが、これで本戦が始められそうだ。よくやってくれた陳宮。…さて、こちらも序盤、本戦前のクライマックスだ。俺が作り出したこの特殊な結界の中から見ようではないか。欲望にまみれた四人の守護天使、【ゴッドハンド】の姿を!」