第三章 欲望の守護天使【ゴッドハンド】 5

 辻谷「これは…火薬の匂い。しかも、以前嗅いだことのある匂いだ。ま、まさか。あいつがここにいるのか?」

 ?「ご名答、卿の考えている通り、私だ。卿と会うのは久しぶりといった所だな。後ろにいる方々には初めまして、と言っておこうか。」

 いったいどういったことであろうか。この物語の序章から久方振りに現れた松永久秀その人である。いつものように薄ら笑いを浮かべ、余裕の表情を浮かべている。

 辻谷「あーあ、出来れば会いたくなかったんだけどなぁ~。なんだか、頭痛くなってきた。あんた、どうやってこんな所へ入ることが出来たんだよ…」

全く想定していなかった事態に対し、頭を抱える辻谷。一体前に何があったのかよく分からない残りのメンバーは、二人のほうを見るのみだ。

 陸奥「なぁ、辻谷さん。その人いったい誰なんだ?前なんかあったのかその人と?」

車の中助手席から首を出す陸奥は、率直な質問を投げかける。それに対する答えは。

 辻谷「お も い だ し た く も な い ! 」であった

一言一言区切って強調する程の口調で話す程、何かしらあったということだけは理解できた。

 アンデルセン「どうやら、何かしらあったようですね。とりあえず、相手は人間なので私の専門外でありますが、何やらあのサムライからは、不気味なものを感じるのは間違い無いといったところと見受けられますが。」

そう話す彼の顔も何とも言えない笑顔である。すぐの席に座っている陸奥の顔は、相当引きつっていた。

 陸奥『あぁ、俺人間でよかった』

と心の中でそういった感想を抱いていた。先祖代々負けたことがない技を受け継ぎ、彼自身もその技を受け継ぐ武術家であり、一度も負けたことがない。その彼をしても一瞬引いてしまったぐらい、何か恐ろしいものを感じ取ってしまった。 

 アタランテ「確かに、あのサムライからはおぞましいものを感じる。かつて何があったかは知らんが、敵対しているのは間違いなさそうだな。」

 車の上に陣取っている彼女は、弓を構え、標準を松永に合わせる。