第三章 欲望の守護天使【ゴッドハンド】 6

 松永「残念だが、私を敵だと認識したまでは良かったが、そこまでだ。」

気づいたときには、車の周りに黒い粉が渦を巻いて取り囲んでいた。

 李「む、こ、これはまさか…皆!車から離れろ!これは火薬の匂いだ!ここから逃げるぞ!」

その言葉を聞き、車に避難していたメンバーたちは急いではなれる。だが、そんな彼らをよそに黒い渦はますます大きくなっていく。

 松永「そうだな。君たちには恐怖を贈り、希望を貰おう。どうしようもない、無限に広がるこの那由多の砂の上で無力さをかみしめるといい。」

 そして、黒い渦は、松永の指先から鳴らされる、乾いた音と共に、紅蓮の渦となり、鉄の塊を溶かしていった。

一方、黒い剣士は、目の前に広がる砂の大地を歩き続けていた。どこまでもどこまでも続いていくそれのせいで、全身鎧を着ている彼にとっては歩きにくいものだった。しかし、彼の精神は狂化していないのにも関わらず、そのようなことは関係ないといわんばかり、前へ前へと歩みを進めるのみであった。

 ガッツ『ああ、ちげぇねえ。あいつらが、あいつらが!!』

いや、先ほどの言葉は訂正したほうがよいかもしれない。いや、言葉を変えたほうがよいといったほうがよかろう。心の中から湧き上がるそれは、【怒り】【憎しみ】といったものだ。恐らく、彼らに会えば、その感情は一気に噴出するに違いない。

だが、彼は己の目的のために歩みを止めることは無い。そうしなければ、死んだ仲間に何といえばいいか、彼は分からないからだ。復讐をしたところで仲間が戻ってくるわけではない。今グリフィスに出会って、そこで仇討しても何になるのか、正直何ができるのか。それ以前に、彼といつかは決着をつけなければならないと感じているのは何故だろうか?それは、憎しみだけから来るものなのか?その答えを持っているものはだれもいない、只、言えることは…

 ?「ほう、再び会いまみえるか。黒い剣士よ、お前と会うのはこれで三度目となるか。そなたとは実に数奇な運命だな。」

彼がたどり着きし場所に集い者は、己の欲望のために絶対的なものとなった【ゴッドハンド】と呼ばれし者たちであった。