第三章 欲望の守護天使【ゴッドハンド】7
彼らのすぐ足元には、無残にも引きちぎれたデュラハンが横たわり、その近くにあるベヘリットが血の涙を流していた。
ガッツ『そうか、あんたまた呼んじまったのか。まぁ、前にも似たようなやつにあったことがあるから知ってるだけだがな』
ガッツはそう心の中で呟いた後、
ガッツ「あぁ、あんたらに会うのはもう腐れ縁だな。それに、そこの女には最近会ったばっかりだからよ。こんな人間、そうはいないだろうさ。」
不思議だ。先ほど抱いていた怒りの感情は失せてしまったようだ。それはやはり、グリフィスがいないせいだ。
ガッツ「なぁ天使長さんよ。あの野郎はそっちにはいないということでいいんだな?」
ガッツの目の前にいるのは左からコンラッド ユービック スラン そして、天使長ボイドの四人だけであった。やはり、あいつはもうここにはいないということだけは理解できた。
ボイド「確かに、闇の鷹【フェムト】は己の夢を達成するためにここにはおらん。」
スラン「残念ね坊や。少し期待したかも知れないけど。」
ユービック「そう落ち込むな黒い剣士。お前は三度も我々に出会うことが出来たのだ。それだけでも幸運とも言えるのではないか?…そうだ、今回はお前が生贄になることはないということを先に言っておくべきだろう。」
寡黙なコンラッドを除いた三人が、彼にそう語りかける。川魚程の小ささしかなく、ガッツに近寄って話すユービック以外は、自分たちよりはるかに小さい存在であるガッツを見下ろしながら語りかける。その威圧感たるや、普通の人間なら間違い無く話すどころか。目を合わせることさえ不可能であろう。
だが、何度もあっているせいか。ガッツは、そこまで近づかなければ彼らと問題なく会話をすることだけは可能になっていた。ただ、もしもう数十歩近づけば、首の後ろにある烙印が痛み出してしまうため、ある程度の距離を離さないと会話に支障が出るという別の問題が出てきてしまうが。
さて、ガッツはここで疑問に思ったことを素直に口に出した。
ガッツ「へぇ、生贄の烙印を押されている俺がなぜ生贄にされねぇんだ?」
確かにそうである。ただ、ガッツはなんとなく理由が分かってていたものの、思わず聞いてしまった。