第三章 欲望の守護天使【ゴッドハンド】9

 そうして、黒のマントを羽織った首謀者は、彼らに会うために歩みを進め始めた。

同時間帯、辻谷たちは【松永久秀】相手に苦戦していた。辻谷は、以前別の平行世界で戦ったことがあるが、その時は手を抜いていたということを理解した。

 

 辻谷「…はぁ…はぁ… 強い。思った以上の強さだ。」

苦戦する理由は、火薬を用いた松永の戦術にあった。彼にかかれば、戦場を簡単に火の海に変えることなど簡単なことである。

自身の敵となるもののすぐ目の前に火柱を立てる。自身の周りに炎の壁を作り、他を寄せ付けずに攻撃をする。そして、巨大な火薬の渦を作り、一斉に爆破させ、粉塵爆発を起こすと様々な方法で攻撃してくるのだ。それに、本人の身体能力の高さにも苦戦の要因がある。少し離れていても、一瞬で相手の懐に迫るほどの踏み込みの速さ。そして、技を見切ると一瞬で回避することのできる俊敏さで、辻谷達は未だ一太刀も浴びせることが出来ずにいた。

 アタランテ『くっ、私の弓すら当たらんとは。皆が攻撃をしている間に狙ってはいるが、それでも避けられる。』

 陸奥『だめか。こういった相手を戦うって、多分俺の先祖にもいなかったんだろうな。』

辻谷たちは6人、一方的はひとり。にも関わらず、恐らく松永はほぼ互角の戦いをしているのだ。

 松永「さて、私はそろそろ君たちの相手に飽きてきたのだが…そろそろ幕引きをしても構わないかね?」

余裕の笑みをこぼす彼に対し、こちらは必死だ。早くガッツのもとへ行かなくてはならないというのに、完全に足止めを食らっているから精神的に余裕が無くなってしまったせいもあるだろう。

 アンデルセン「猪口才な!貴様のような異教徒はここで葬り去ってしまわなくてはならん!」

アンデルセン神父は、二つの剣を構え、瞬時に振りおろす。しかし、松永は瞬時に石版の後ろに隠れ、そのまま指を弾くと、神父の周りに仕込んであった火薬が轟音を立てて爆発を起こす。

 アンデルセン「くっ!小賢しい真似を!貴様はこのまま許しておくわけにはいかん!神の名に置いて、貴様を倒す!エイィィィィイイイイメン!」

 そうして、アンデルセンは炎を振り払い、松永に対して石版の裏から迫る。だが、既に松永は別の相手を始めていた。

 アンデルセン「ちっ!次は殺す!」

何故だかわからないものの、アンデルセンは一方的に彼を敵視していた。恐らく、直感的に松永の邪悪な本性が、神父の癪に障ったのだろう。それは、すぐ近くで戦っていたリヒターをして

 リヒター「すごい気迫を感じる。俺も敵相手にそこまで凄い剣幕をしたことは無いぞ。」

というほどである。