21Century Schizoid Man 1
Cat's foot, iron claw
Neuro-surgeons scream for more
At paranoia's poison door
Twenty-first century schizoid man
猫の忍び足 鉄の爪を持った
脳神経外科医が「もっと!」と金切り声を上げる
妄想症に毒された扉で
21世紀の精神異常者
時は21世紀。とはいっても、我々の住む世界とは、極限にまでよく似ていて、まったく違う世界。国は日本。地名は横須賀。ここに、一人の精神病と認定された男が隔離病棟で入院していた。何とも奇抜な、とてもこの世で生きているとは思えないような恰好をした彼は、イタリア人であるということはまったく分かっていなかった。
精神患者「…お…俺はははh…帝ていてい王だ。おおおおおおれのそそそ場にちかよるなぁっぁぁああ!」
ときおり、彼は意味不明な言葉を発する。自分は一体何者か、自分はどうしてこんな場所にいるのか、まったく理解できてはいなかった。
この男がどうしてこのようなところにいるのか、これがまた不可思議な話である。ここは元々、現実の日本ではもう存在していないが、この世界では、わけがあって未だに軍が存在している、という所から説明したほうがいいだろう。この世界では、【深海棲艦】と呼ばれる怪物が世界中の海で突如現れ、人類が制海権を失ってしまっているという世界だ。しかも、過去に第二次世界大戦がないというのも関係しているのであろうか、軍もそのまま日本に残っている。すなわち、何が言いたいのかといえば、この男がいるのは、【海軍病院】なのだ。元々この病院は、海兵隊員がPTSDなどの精神的な病を治療するために創設されたのだが、まれにこの男のようなそれ以外の男が担ぎ込まれるということもあるのだ。
それはある嵐の夜。草木も眠る丑三つ時にそれは起こった。夜勤で病院の見回りをしていた看護婦が体験した奇妙な出来事であった。
その夜は、非常に荒れた天気であった。激しい雨音が病棟になり響いている。先ほどの精神患者の部屋に差し掛かったその看護婦は、その部屋から何やら話声がするのを聞いた。
看護婦「ん?何かいまもの音がしたような?」
彼女は、始めは気のせいだと思ってそのままその場を立ち去ろうとした。しかし、やはり気になってしまい、診療室の入り口の引き戸に耳をあててみた。
?「…どうやら、想像以上に酷いありさまだな。永遠に死に続けるという過程を繰り返すというのは余程精神的に堪えるというわけか。…この人間道でなければ正気を取り戻せないまでにきているな。」
人間道?はて、それは人の名前なのだろうか?恐らく、自分で名乗ったということはそういう名前らしい。
人間道「しかしだ。あの吉良吉影とかいう男から悪心の部分だけの魂を抜き取るのは簡単だったが、この男の場合はある程度は簡単であろう。さぁ、ディアボロよ。その体からお前の多重人格のもう一人の部分を取り出してやろう。」
扉越しからだったので、その看護婦は部屋の中で何が行われていたのかはわからなかった。聞こえるのは、再び激しく降り始めた雨音だけとなった。