吉良吉影は平穏に過ごしたい 1

これは、5章へと続く物語。ある男から見た、もう一つの短い物語。

彼がこの世界へ来たのはほんの数日前だ。一度この世から完全にいなくなってしまった自分は、謎の男によってよみがえったものはいいものの、それだけでは不十分だということらしい。そのために、こちらの世界へとやってきたのだ。

場所は現代の神奈川県横須賀市。…とはいっても、我々の住んでいる世界とは異なるパラレルワールドの日本。そこに、ある男が一週間前に別世界から引っ越してきた。彼が引っ越してきたのは、かなり立派なログハウス風の邸宅である。名は、【吉良吉影】といった。

 ?「全く、折角別世界で生き返ったんなら、静かに暮らしたいのに、どうして面倒なことに巻き込まれたのか。自分の半身を探せだって?そんなことより、私は静かに、そして平穏に暮らせていたらそれで満足なんだがね。」

そんなことをぼやいてはみたが、今は少なくとも平穏無事に暮らせているということで、吉良吉影は、非常に満足はしているというのが本音であった。

 吉良「まあ、あの仮面の男からもらった自分の戸籍情報で、こんなにきれいな海辺の町で誰にも邪魔されない生活を送ることができているのはいいけどね。…一つ、この世界にはある欠点はあるが、私の【キラークィーン】があれば問題はない。」

 吉良は時計をみて、現在の時刻を確認する。…まだ朝の9時、今日は仕事も休みだ。さて、これから一日をどう過ごしていこうか?

吉良は、今日のニュースを自分で買った新型ノートパソコンで確認する。一番の話題は、昨日起こった【横須賀鎮守府付属国立病院爆破事件】について持ちきりだった。

 

 吉良「さて、さすがにやりすぎたか。まぁ、犯人を特定することは不可能だろうけどね。まさか、爆発したものが100円硬貨なんてそんな馬鹿げた話、誰も信じないだろうからね、フフフ…。さて、今日の深海棲艦の出現率は…そうか、今日は低めか。なら、外出しても問題はないね。」

 吉良が言っていたこの世界の欠点がこの深海棲艦という名の怪物である。現在、吉良がいるこの世界の日本、いや世界中に突如出現したその怪物たちは、瞬く間に制海権を人類から奪い去った。しかし、この世界には、軍艦の魂を持つ【艦娘】という女性たちが子の怪物たちを駆逐しているのだ。

 吉良「って、何なんだっておもうよこの世界。ファンタジーやメルヘンじゃあないんだからってね。ま、自分の能力も、この世界の連中からしたら、そんな漫画みたいな、なんて思ってしまうのかもしれんが。」