異世界侵攻録 進展 14

 しかし、白夜はそれでも妹のルキアを巻き込みたくはなかったようだ。恐らく、この老人が何かしらの力で、自分の精神を操っているのではないかということを感じ取っていたからだ。それに、隊長格二人が、旅禍の一人に敗北したという事実がある以上、相手もかなりの手練れが、それも複数人いるということだろう。なら、この場にいるただ一人の隊長格として負けるわけにはいかなかった。

 白夜「それだけは断らせてもらう。貴様を倒したのち、呂布とかいう男もおのれ自身で討たねば隊長としての恥だ。」

 老人「そうか、なら仕方ない。ならば…

老人は両手持ちだった武器を右手持ちに突如変え、左手の平を突如ルキアのいる方向へ向けた。それは、僅か数秒のことだったはずであった。少なくとも、白夜にとっては長い時間に感じられたようだが、実際はそのくらいの時しか流れていなかった筈である。

何が起こったのかを説明するならこういうことになる。ルキアの体が突如老人の左手の平へ向けて引っ張られるかのように宙を移動したかと思えば、そのまま老人は白夜のほうへ左手を向けた。ルキアの体は白夜の持つ斬魄刀へ引き込まれ、そのまま接触したのだ。ギリギリのところで致命傷は避けられたものの、ルキアは脇腹に深い傷を負い、そこからは血が大量に流れ出ていた。

 老人「こうするしかない。という訳だな、若いの。余の持つ暗黒面の力を見くびったが故、こうせざるを得なかったのだ。

この瞬間、白夜の心は暗黒に覆われた。老人からすれば、計画通りにことを運ぶことが出来たことは言うまでもない。

 

 老人「そう、それで構わん。心を暗黒で満たすのだ。しかし、残念だが余の弟子にすることはできそうにないの。お主にはわしの欲する力を全く持ち合わせてはおらぬからな。