異世界侵攻録 進展 16

そう、これがこのサーレーという男が呼ばれた理由である。この男の能力は、この技に絶対有利ともいえるからだ。…ただ、当の本人は相当緊張しているらしい。そのためか、体が固まってしまっているようだ。

 

 サーレー【いやいや、いざ目撃すると相当やばいもんじゃあないのかこいつはよ!あの綺麗な桜の花びらみてぇなもんが全部刀の刃ってことを考えたらやっぱりビビっちまうぜ。でもよ…】

サーレーは緊張こそしていたが、心のどこかで冷静なところがあった。それは、イタリアンマフィアの頂点に立つ組織 情熱【パッショーネ】に所属していた男である。勿論、修羅場も潜ってきたことなど何度でもある。これは人生の一つの試練だ!これを乗り越えることで、自分はまた一つ成長することが出来るのだ。

 サーレー【そんなことを考えたって仕方ねぇしなぁ。…そう言えば、相手は俺と違ってエリートだって話だ。金も持ってるし、俺みたいな下っ端でもねぇ。でもよ、人生それだけでいいかってことかどうかは分からねぇってことは俺でもなんとなく分かる。ただ、自分がなんでこんなことを考えてるのかは良くわからねぇ。…少し混乱してきたが、何故だか希望ががむんむん湧いてきたぜ!】

白夜は相手の様子なぞ全く気にもせず、遂に卍解を使用する。そして、無数の刃は敵めがけて一直線に飛んでいく。このままでは、只何の抵抗もなく切り刻まれるのみだ。しかし、ここで起こるは下剋上。信じられないことが起こった。

 サーレー「よし…成功だ。やっと俺の本当の能力をばらしてもよくなったな。」

サーレー以外には、彼の持つ精神の具現化した像【スタンド】を見ることはできないが、能力を行使しているのは一目瞭然だった。千本桜はあと数センチという所まで迫っていたが、何故か空中に制止したまま動かなくなっているではないか。

 サーレー「俺の能力の名は【クラフトワーク】。物体をその場に固定することが出来る。それは、水中であっても、空気中であってもだ。」