喫茶店アーネンエルベ 1

時は山本たちが冬木大橋へ移動を開始した頃、同じ冬木市では、一人の少年がある場所へと向かっていた。そのいでたちは、恐らく現代の少年たちはしないであろうという恰好である。青地の学生服に黒と黄色の縞模様のちゃんちゃんこを着ているのだ。そもそも、この少年、人間ではないのだ。彼の名は【ゲゲゲの鬼太郎】。幽霊族という種族の【妖怪】である。彼は、あるところに用事があるためにこの地方都市にやってきたのだ。

 鬼太郎「しかし、本当にこの場所であっているんでしょうか父さん?」

鬼太郎は、そばにいる自らの父親に疑問を投げかける。どうやら、彼の父親もこの辺りに存在するはずのその喫茶店が見当たらないので四苦八苦しているのである。

 父「ん~確かこの辺にあるはずなのじゃが…おい、鬼太郎、あれじゃないじゃろうか?ん~【アーネン・エルベ】と看板に書いてあるからあそこで間違いなさそうじゃ。どうやら、依頼主も入口に立っているようじゃ。」

その依頼主である女性も、彼らに気がついた様である。この依頼主、名前を【両儀 式】という。

 式「ん?どうやら、きたみたいだな。時間通りに来るとは、律儀だな。ま、そっちの方がオレとしてはいいけどな。」

彼女は、少年の方を見た後、簡潔な自己紹介をすました後にそのまま喫茶店の中に入ることにした。今日は晴天。雲一つない午前の空である。しかし、どうやら夕方ごろから雨がふりだすという予報だ。勿論、夕方までかなり時間があるので外で話しあうのもいいのだが、それはさすがに失礼であろうということで、この喫茶店にしようというと彼女が誘ったのだ。

 式「さて、中に入ろうか。君…という言い方でいいのか?少なくとも、俺よりは年上なんだろう?妖怪と人間では年齢の取り方が違うっていう話を聞いたことがあるから、その…鬼太郎さんって呼んだほうがいいのか?」

彼女は、言葉遣いからわかるように、非常にぶっきらぼうだ。だが、そんな彼女なりの配慮をしているのだ。しかし、温厚な鬼太郎少年は、そんな細かいことなど気にしなさんなと言わんがごとく、気さくな雰囲気で、

 鬼太郎「構いませんよ。僕は、別に呼び捨てで呼ばれてもいいですし、お任せします。」

と答えてくれた。そのリアクションに対し、彼女は【そうか】ということで、自由に呼ぶようにすることにした。

さて、この二人が会うことになったのは、式がとあることに巻き込まれてしまったからである。それは、とある雨の夜道。とある田んぼの近くを通りかかったときの話だ。