喫茶店アーネンエルベ 3

それはそうであろう。彼女の仕事の雇い主はこんなことまでは知らないのだから。すると、どうであろう。今度はなにやら地面を揺さぶるような振動が始まったと思えば、どこからともなく重機が編隊を組んでこちらに向かってくるではないか。すると、その重機は瞬く間に田を荒らし回ったと思えば、あたりの光景は次第に近代化していき、次第にそれは別のものへとどんどん変わっていくではないか。

それは、町だ。人が暮らすコミュニティだ。公園だ、工場だ、商店街だ。これは、一体何なのだ?

一体何が起こったのか、彼女には分からなかった。ただ、気付いたときには、彼女はきれいに舗装されたコンクリートの道路の上に一人でぽつんと立っているだけだった。

 式「…いやいや、なんだったんだ今のは。疲れでも溜まってんのかオレ?」

最近疲れでも溜まっているのだろうかと一瞬思ったのだが、体は特に重くもない。それに、夜目もしっかりしている。では、今のは幻覚だったのとでも言うのだろうか?答えをいうと、確かにその通りだ。これは、この辺りに確かに存在していた土地の記憶であり、自然破壊の記憶の一旦だった。

ここまでの話を聞いて、鬼太郎はその正体がなんであるか薄々気がついていた。そこで、彼はこんな質問をぶつけて見ることにした。

 鬼太郎「いや、そんなことは無いと思います。今の話でもしかしたらという候補はお思い浮かびましたので。そうですよね、父さん。」

 父さん?果て、そんな人物がこの場所にいただろうか?少なくとも、この店には今のところ店員を除いて誰もいないようだが、一体どこにそんな人物がいるのだろうか?