夢 その 2

 ?「…あら、また酷い夢を見たの?」

目を覚ましてすぐに、枕もとで誰かが耳元でささやいた。彼の妻である【香織】だ。その声は、誠一の心をやさしく包み込むような柔らかい声であった。

 誠一「ああ、又だ。…どうしてもあの夢を見てしまうんだ。…もう完全にトラウマになってしまっているらしい。」

 香織「そう。でも、あなたは悪くないはず。相手があんな【怪物】だったらどうしようもないわ。」

その言葉は、彼を落ち着かせようとするはずなのだが、彼はどうしてもそんな気になれないのだ。その後、彼はいつものように朝食を取り、そのまま自宅から車で20分もかからない職場へ向かう。彼の生きている時代は25世紀末。今から約500年後の世界である。彼の職場は【時空省】という【国連】直属の機関の中の【時空対策本部】という場所でだ。因みに、この時代では、全ての国が国連の下部組織となっている。彼が暮らしている日本でもそれは変わりは無い。彼の組織としての役職は【次官】。大臣に次ぐ権力を持つ。しかも、彼の年齢は25歳。かなりの速度での出世だ。

だが、彼はやはり若い。そもそも、彼がここまで出世したのはある能力のおかげでここまで八面六臂の活躍をしてきたおかげだ。しかし、現実は時に非情だったのだ。

 山本【果たして、私に次官の役職はふさわしいのだろうか?あれだけのことがあって自分だけのうのうと生き延びて…】

そうは思うものの、いつものように時空省に到着する。そのまま職場に向かう。自分の職場である次官室は、完全な一人専用の部屋、なんの面白みもない。ある程度デザインに凝ってはいるようではあるが、そんなものを楽しむ余裕など、今の自分にはまったくない。

彼は、仕事を始める前に一旦窓の外を見る。…見える景色は只々人の山。そんな人を見ながら、こんな自分な気持ちなぞ、知るわけがないのだろうとあたり散らすかのように見ていた。そんなことを考えても仕方がないことは分かっているので、そのまま仕事机につくことにした。