夢 その 3

 さて、これから仕事案件が入ってくるはずだ。まずは、机の上に置いてあるコンピュータの電源を入れて、自分が出張しなくてはいけないような大きな事件が無いかチェックする。もし、…どうやら、今のところは入っていないので、今日は事務作業で一日終わるだろう。そうして、心を無にして仕事を開始する。

 …そうしているうちに、あっという間にお昼前になってしまった。もう、ここらで一旦仕事を切り上げて食事にでもしようかと席を外して部屋を出ようとしたとき、どうやら聞きなれた声が外から聞こえてきた。

 ?「お~い。時空省次官いらっしゃるかな?もうすぐお昼だよ。そろそろそこから出る時間じゃあないのか?」

ああ、この聞きなれた声は…。いつも元気だなあの薩摩隼人。さて、折角誘われたのなら外に出ることにしよう。

 山本「ああ、そうだね。すぐに行くよ。」

そのまま彼は席を立ち、仕事場所から離れる。部屋の出入り口である自動ドアがあいて、声をしたほうを振り返った。

だが、そこには誰もいない。…おかしい。いつものようにそこには低い声をもつ好青年が立っているはずなのだ。その代り、その先に広がるのは、明かりがついていない廊下がずっと続いているだけだ。

 山本「…おかしい。明かりが消えているなんて滅多にないはずなんだけど。それに、間違い無く声が聞こえたのに、辻谷君がいない。」

余りに不思議に思う山本は、電気が消え、暗くなっている廊下を進む。さて、この先を進むと食堂への近道になるのだが、どうもおかしい。今までこんな道があっただろうか?このまま先に進むと、何かに吸い込まれそうな感覚がしてならない。果たして、自分はこのまま進んで戻ってくることが出来るだろうか?などと考えてしまう始末だ。

ふと、その暗闇を進んでいくと、何やら橙の光が見えてきた。何とも言えない美しいひかりだ。山本はそのままその光につられて、何もかも忘れてそこへ向かい始める。