夢 その4

何故だろうか。良くわからないが、やはりそこへ行くべきではないような気がしてならない。何故だ。何故そこへ行ってはいけないんだ?ただ、彼はそこへ行かないと…そこへ行かないと、みんな、みんな消えてしまうから。して、そこは地獄だった。赤い光はあたりを激しく照らす。聞こえるのは地獄の底から響き渡る怨嗟の声、声、そしてこえである。

ああ、そうだ。ここは、あの場所だ。これは、【自分の心象風景その者ではないか】。これは、半年前に起きた地獄の再現であった。

それは、赤い光景であった。黒い赤であった。明るい赤であった。そして、絶望を深くする赤であった。

 目の前で行われているのは、一方的な虐殺である。自分は抵抗した、交戦した、奮戦した。しかし、そこには埋まらない壁が存在した。

 ?「…どうだ。これが絶望だ。」

そうだ。いくら命令とはいえ、自分の考えは本当に正しかったのだろうか?結果としては、このようなこととなってしまう。その者は言った。何故この場所に踏み入ったのか?何故危険を感じなかったのか?

そして、最後に自分の姿を見る。滴り落ちる赤いものをみた。自分の足元が赤で覆われていくたびに力が抜けていく。…この時、自分は人生の終わりを感じた。だが、その者は言った。お前は命を取るまでの価値を持っているのかと?

力が抜ける。して、目の前が次第に暗くなる。そして、気がついたときには…。

 辻谷「おお、やっと目を覚ましたか。…良かった。全く、おまはんは最近働きすぎるから駄目なんじゃ。」

ああ、夢か。どうやら、最近働き詰めで過労で倒れてしまったらしい。気付いたらもう午後4時。それまで、完全に寝ていたというわけだ。そう医務室で横になりながら冷静に自分の状況を把握していた。