辻谷との会話 1

 山本「ああ、どうもそうらしい。しかし、どんなふうに倒れていたのかな自分。全くその時の記憶が無いからね。」

 辻谷「うん。それがね、君が仕事部屋から出た場所からすぐ近くのところさ。仕事が一区切りついて、気が抜けてしまったのかな?」

そうか、そうだったのか。これは、相当重症だということを今日始めて悟ることになった。一体どれほど力を使い果たしてしまったのだろうか。

 

山本「全く情けない話じゃないか。自分の体調管理もできないような人間がわずか25歳で上司なんだから。」

辻谷は、そんなことないさと気づかいの言葉でねぎらってあげようとしたが、【あの事件】依頼、何を言っても軽い言葉にしかならないことは彼がよく知っていた。仕方ない、ここは相手にうまく話を合わせてあげたほうがいいだろう。

 辻谷「まぁ、そう落ち込むな…と言いたいところだけど、こんなことになると、自分もそんな気持ちになるんだろうな。…自分は、上司っていう立場に立ったことが無いから、あんまり偉そうなことがいえないよ。」

そんな、彼なりの気づかいを察した彼は、辻谷に優しく声をかける。

 山本「いや、その気づかいありがたいよ。…全く、持つべきものは友だね。…さて、もう上からこれからのことは通告来てるんじゃないかな?」

 辻谷「流石、その点頭の回転は疲れていても速いねぇ。…簡単に内容を話すと、君は5日間しっかり療養をしたほうがいい。ということになった。っということは先に言っておこうかな。」

そうだろうなぁと山本は冷静になって己を見つめ返す。この内面にある泥のようなものが、この5日間で取れるといいなという淡い期待があるが、恐らく、それは無理だろうなと瞬時に思ってしまった。あの責任は、自分に生涯突き刺さったまま心に残り続けるだろう。