泥田坊 7

 ロマン?【そんな言われ方をされると不思議な気持ちだ。寧ろ、私もこの力を使ってこんなことをしたくはないさ。】

どこか後ろめたさを感じさせる彼の口調から、何かしら深い理由を感じた。それにしても、何故自分の正体に気づいたのか気になるその男性は、山本に問いただす。

 ?【しかし、何故私の正体を?…もしかして、本当はまだ知っていることがあると見たのですが?】

 山本【ええ、勿論知っています。本物のロマニ・アーキマンが何者かということ、そして、彼がもうそこにはいないということも。】

そう、山本はカルデアのことについてまだいくつか知っていることがあるのだ。その一つが、ロマニ・アーキマンという人間についてだ。

 山本【そう、本物の彼は、全ての特異点を解決した後、カルデアからは去ってしまった。いや、そもそもこの世から消えてしまったという言い方が正しいでしょう。死んでしまったという訳ではないですが。しかし、何故あなたが彼の姿をしているのかは良くわかりませんが。何かおありと見受けます。】

 

どうやら、考えていた以上にこちらのことについて詳しいようだと男は理解はしたが、まだ自分の正体については分かっていないということも感じ取っていた。また、何故自分が正体を隠しているのかは未だ分かっていないのだろうということも同時に理解した。

 ??【そう、確かに本物のロマニ・アーキマンはここにはいない。残念だが、それは事実。私が彼の姿を借りているのは、それを利用してです。この格好なら、カルデアの皆に暗示をかけるのも簡単だったためさ。本当なら、私は老人の姿をしているんだけど。今は、あの男から姿を隠す為にこの格好をしているのさ。】

 山本【なるほど、事情は分かりました。…おっと、そろそろ時間ですね。精神時間の数分は現実では刹那の時間。そろそろ戻りましょうか。】

 ??【そうするとしよう。私も、まだ彼らの前ではロマニ・アーキマンでいたいからね。…それでは私も戻るとしよう。】