冬木へ戻る聖職者 4

 プッチ「いやはや、これは、何と読めばよいのやら…。」

 ゲーニッツ「おや、どうしました?その石版に何と書いてあるのか、見せてはもらえないかな。…おお、これは、読めない!」

言峰は、困り果てている二人を見て、一瞬愉悦を覚えてしまう。この神父、前にも少し話したが、神父として、神への信仰心は間違いなく誰よりも強い。しかし、根は人格破たん者であるので、普通の人が楽しめるものが楽しめない男なのだ。すなわち、彼が愉快的悦を感じるのは、まさにこの瞬間である。しかし、このまま愉悦していると話が先に進めないので、心の中では大笑いしつつ、彼らの手を貸すことにした。が、しかしである、その石版に書いてある言葉が完全に暗号のようなのだ。

 

以下、これが内容の全文だ。どうやら、ひらがなで書いてあるようだ。

かお なお さえ かい ばあ ん ない あう たう さい だあ さあ らえ らう まお なお はあ なあ ん ざい があ あい まあ まお たお まえ さい まお なお なあ らい やお かう なえ ん ざい たえ まい らう ばえ さい。

 

 言峰「…」

 プッチ「それで、分かったのか。この石版にかかれているものが何なのか。」

そうしたら、そうであろうか。言峰は、急に手で顔を隠し、いきなり大声で笑い始めてたのだ。

 ゲーニッツ「どうしたのです?急に笑い始めて。そんなに面白いことが書かれてあったのか。」

すると、どうであろうか。言峰は、今度はいきなり真顔になり、二人を振り返って一言、あっさりと言ってのけた。

 言峰「…全く分からない。」

 

三人の間には、急な絶望感が広がり、誰か、この暗号を読めるものがいないか探さなくてはいけないと確信した。仕方ない、ここは、この街で聞き込みをして読める人を探すしかないらしい。