モールとその師 5

 モール「只今戻りましたマスター。相変わらず不穏なことはありません。」

 皇帝「そうか、なら問題ない。…おお、そうだ。すまぬが、一旦席を外させてもらえるかな博士?

 ゼーナ「ええ、お弟子さんとお話があるのでしょう?いいわ、私も今からやりたいことがあるし、どうぞご自由に。ではでは。」

そうして、皇帝はモールとどこかへ移動を始めた。なるべく、人目を避けて話したいことがあるらしい。

 二人は、大空洞へとつながる、結界の張られたほうの入り口から何事もなく外へ出る。この結界は、少々特殊なつくりをしており、他人が侵入すると、別のところへ道を繋げるか、偽の大空洞へと誘わせるようにしてある。変に追い払うような作りをしては、逆にこの街に住むという魔術師にばれてしまうというのが理由だ。そのまま二人は、誰にも気づかれないように夜の街を、建物の上をつたいながら移動する。そうして、二人は冬木の街でもかなり目立つ大きなビルの真上にたどり着いた。

 皇帝「さて、ここなら良かろう。景色もよいうえな。…まぁ、余が治めた帝国に比ぶるば少々スケールは劣るが。さて、わが弟子よ、あの者たちにはわれらが計画は知られておらぬか?

 モール「問題はありませんマスター。後は、グリーバスがしくじらねば問題はありません。」 

 皇帝「そうか、我らの中で一番の不安要素はあの男だ。そこでだモール、あ奴はわざと失敗するようなところにつかせてある。要は駒よ。それよりも、我が真に計画する計画よ。

 

 モールは深く頭を下げた後、小さい声である計画の名を口にした。それは、皇帝にとって始めから己が召喚された際に決めてある計画である。それは、この架空のヴィランたる彼を召喚した瞬間、計画に移されるものである。そのことは、マスターである二人でさえも知らない。