拳を極めしもの 5

一方で、この場所に迷い込んだ者は、かつて自分が会ったであろうその気配を頼りに歩みを進めていく。

 ?【しかし、奇妙なり。この気配は間違いなくあ奴。しかし、何故この場に?…む、それ以外に何者やらの気配が…】

 

彼が感知したその気配の主は、彼のもう近くまで迫っていた。その名は【猗窩座】。鬼舞辻無惨の配下である鬼の一人だ。服装は軽装で、素肌に袖なし羽織、くるぶしまでズボンを素足の格好をし、細身だが筋肉質という男だ。

 

ここで捕捉を挟むとしよう。この世界における鬼とは、我々の知っている鬼とは根本から違う。先ほど登場した鬼舞辻無惨という男から血を分けてもらうことで人外の力を得た者たちの総称だ。平安時代のころ、重い病にかかっていた鬼舞辻は、とある医者から煎じた薬を飲むことで人外化し、大正時代まで生き延びてしまった。

 

超常的な力を得たものの、太陽の光を浴びると死んでしまうという体質となり、これを克服するため配下の【十二鬼月】に調査させているということなのだそうだ。ちなみに、それを克服するためのヒントである【青い彼岸花】というものを探しているのだがいまだ手掛かりはつかめずといったところらしい。

 

話を戻そう。猗窩座は、その者の気配から、ただならぬものを感じ取っていた。