拳を極めしもの 9

猗窩座はその動きに対しても驚異的な身体能力でその攻撃を躱した。が、その蹴りの勢いやすさまじいものであった。豪鬼の蹴りは、彼らが戦っていた部屋全体の屋上を破壊するだけならまだしも、一部屋を丸ごと破壊したのである。二人はそのまま下へと落下していく。そうしてそのまま数十メートル落ちたところで、他の部屋の天井へそれぞれ叩きつけられるように着地した。

 猗窩座「ぐあっ!!」

 豪鬼「ぬぅ!!」 

二人とも、地面に落下した時の衝撃で体が動かせないのだろうか、そのまましばらくうずくまっていた。

 

先に起き上がったのは豪鬼だ。先ほど破壊した部屋の残骸が上から落ちてきて、そのまま埋まっていたが、それをかき分けて体を出すことができた。

 豪鬼「…うむ。」

豪鬼は、ふと上を見上げ、そしてはるか下を見る。あれだけの高さから落ちたのにも関わらず、まだはるか下があるということに驚く。

 豪鬼「これは人のなせる業ではあるまい。まさに、悪鬼羅刹の類であろう。…貴様も早く起き上がらぬか。この余興、貴様もたのしんでいるのであろう?」

豪鬼は、瓦礫の山が積み重なっているもう一か所を見つめる。その場所から、瓦礫を振り落としながらふらふらと立ち上がる猗窩座が現れた。