欺瞞 26
?「案ずる必要はない、その者は君たちの味方だ。そうであろう時空省次官山本誠一殿。」
驚いた。まだ自らの素性を一切明かしていないのに自分が何者であるのか声の主は既に知っている。しかも、具体的にだ。
山本「え、あ、はい。時空省次官の名に懸けて間違いなく彼らの味方です。…と、その前に、あなたは一体何者なのですか?何故私の正体を知っているのですか。」
声の主は三人に落ち着いた声で語り掛ける。不思議なことに、その声を聴くと何処か落ち着いた気持ちになっていく。
?「今はまだ話せないのだ。すまないが今素性を話すと敵に感ずかれてしまう。ただ、これだけは言っておいた方がいいだろう。私はいま、別人に成りすましている。機が来たら君たちに姿を現すつもりだ。それまではこうして時折遠くから語りかけるだけにしておきたい。」
モリアーティ「やはりそうですか。あなたの言葉を聞いたのは我々二人が初めて、と前にお話になられた時もまだ正体を明かせないということでしたネ。…どうやら、誰かに感ずかれたくないという事で間違いないようですが?」
?「そうだ教授殿。今感ずかれると駄目だ。君たちの心に直接語り掛けるのにもタイミングが必要なのだ。今は、はぐれた仲間と合流することを考えて欲しい。そうすれば、私の素性を少しずつ明かしていこう。」