片翼の天使 1

その相手とは、阿僧祇の闇と呼ばれる異空間に迷い込んだ山本時空省次官その人である。山本次官自体も、電話相手がかつて出会ったことがあるクラウドだと分かり、思わず声が上ずってしまう。

 

 山本「クラウドか!いや、まさか電話の相手が君だとは。正直驚いたよ。」

 クラウド「いやいや、まさかあなただったとは。…あの時以来、ですか。こうして会話するのは。」

 山本「ああ、あの時以来だ。復活したあの怪物を俺のせいあんなことになってしまって以来だ。いまだに、君たちには申し訳ないと思っている。」

 

山本は、何かを思い出したかのようにクラウドに謝罪する。周りの皆、この場合は電話の会話内容を聞いている人たちからは過去に何かあったのかということは理解できた。が、二人の会話内容からすると、互いに相手のことを悪く思っているということでもないようだ。

 

 クラウド「構わないです。あの事件は俺達にも予想がつかなかった。でも、あなたの部下があんなことになってしまうなんて。」

 山本「ああ、俺の力不足だったとしか言いようがないよ。何もできなかった自分が未だに不甲斐ないと思っている。…いや、しんみりするために電話をかけてきたんじゃないだろう?いや、厳密にいうと、互いに誰かの力によって電話を掛けられたようだけど?」