片翼の天使 20

 その声を聞いたことがあるのはどうも山本次官だけではないようだ。サーヴァント二人もその声に聞き覚えがある。その冷徹さを感じさせる声、間違いない、あの男だ。

 

その声を聞いたのはほんの二日前のことであった。突如、カルデアはそれによって地獄の淵に立たされることとなった。

 

そも、山本が降り立った偽のカルデアというものは、旧カルデアをモチーフとしてうちはマダラが作り出したものである。それを作り出した限定月読と呼ばれるその術は、幻術によって異空間を作り出すという物であったがそれには一応のベースが必要だった。

これに、神をも超越すると豪語する者である【那由多銀河】の手が加わることでそれは完成したのだが、現在のカルデアはもとにあった場所にはもう存在しないのだ。

 

現在は、この世からは隔絶された空間の中にある場所に存在しているはずだった。

 

だが、そのしかしだ。その男はあろうことかありえないことに【カルデアのあまたの英霊を相手にして勝利してしまったのだ】

 

 巴御前「まさか…せふぃろすという者はこのものということなのですか!」

どうやら、その時はまだ自身の名を明かしていなかったようである。彼女が驚くのもむりはないだろう。まさか、互いの共通の敵が出てくるとは思いもよらなかったからだ。