片翼の天使 25

…それから幾らの時間がたったのだろうか。…来ない。帰ってこない。いくら何でも遅くはないだろうか?あれからもう20分ほど時間が経過した。この部屋から食堂まで往復するまで4分ないし5分とかからない筈だ。気になった巴御前は、四人に対してマスターを探してくると言い、そのまま席を立った。

 

 巴「おそらく、ますたあの事ですから、余計な心配はいらないとは思うのですが…」

しかし、いない。いない。どこにもいない。ほかのサーヴァントが居住している部屋や管制室、トイレやストームボーダーというカルデアが所持する乗り物まで探したはずなのだが…いない。どこにもいない。

 

それにしても静かすぎるのは何故だろうか。いくら何でも静かすぎはしないか?どうしたものかは正直わからなかった。

それもそうだろうさ。ここにはもういないのだから

いや、よく考えろ。そもそも、どこの部屋にも、

だれも、だれも、いないじゃいか。

おまえは現実から逃げ、この場で楽になれ

 

いや、今はそれよりマスターの方が大事だ。自分一人だけ…一人だけ?

 

ふと何か思い、後ろを振り返る。

 

 巴御前「え…?」

気づけば、そこは戦場だった。時は、寿永3年。西暦1184年の冬の時である。

後白河法皇との対立による戦いに、終止符が下される最後の戦い。その場所に彼女は立っていた

 巴御前「これは、…そうだ!義仲様!!!」

が、しかし。彼女が振り返った時、聞こえてきたのは肉が刃に引き裂かれ、血が飛び散る音だった。

 巴「ああ、ああああぁぁぁぁあああああ!!!!」

手遅れだった。もう、そこにはかつて己が愛していたものはいなくなっていたのだ。