第三章 プロローグ

いったいどれほどの時がたったであろうか。もうじき夜になろうというのに、皆どこへ消えたのか。自分でも何が起こったのか分からない一人の青年は、空を見上げると、雲は波を立てている。しかし、それももう少し時が経つと見えなくなるだろう。この奥深い森の中では誰の声も届きはしない。

 ?「さてと、こっからどうするか。少なくとも、このままじゃどうするわけにもいかねぇな。」

今日は【アレ】が襲ってくることもない。今日は何もない夜となりそうだ。暗闇が迫るにつれて、全身黒の甲冑を身に纏う彼の姿は、次第に闇へと消えていく。

再び空を見上げると、星のカーテンが一面に広がっている。

 ?「へっ、そういえば、星を見るなんてどれくらいだかな。夜中化け物ばっかとやり合うと忘れちまうみてぇだな。」

彼にとって、こんな静かな夜は久方振りとなる。屈強な剣士である彼【ガッツ】は、安堵して体を横にする。

自分は今どこにいるのだろうか?わかっていることは、突如現れた謎の【黒い穴】に吸い込まれ、気づいた時には一人のみとなっていたということである。いきなり現れた仮面の男のおかげでこんなことになってしまい、非常に迷惑なこととなった。何故あの男は俺たちを狙ったのか、そして、何故俺はここへ呼び出されたのか。…もう考えるのは止めにしよう。まずは、明日朝になってどうすればいいかにすればいい。そうして、ベルセルク、【狂戦士】は深い眠りについた。