時空省外伝! 辻谷広行の休暇 エピローグ

経凛々は、完全に滅した。それは、当の本人でさえもそう考えていた。だが、長い時を生きているとそんな彼に奇妙なことがあるものだ。

 ?「起きるのだ、Mr.経凛々。私の声は聞こえぬかね?」

その声に呼び出された彼は、ふと目を開ける。一体どこだかわからない空間だが、ふと目線を上げると、その者はいた。その姿は黒く円型で、見たこともない様子をしていることだ。

 

 ?「どうやら、目を覚ましたようだね。君はいま喋れぬ状況下にある。そのまま横で構わん。おっと、私の自己紹介がまだであったね。私は【アメリカ合衆国 妖怪大統領バックベアード】というものだ。よろしく頼む。」

 バックベアードと名乗るその妖怪は、実に威圧的であるが、なぜか頭が低いという矛盾のある印象を受ける。これが、妖怪大統領というものなのであろうか?ただ言えることは、これがいわゆる【カリスマ】というものなのだろうということだ。

 ベアード「いやいや、私の友人である【ドラキュラ伯爵】の僕、ギャイボンが世話になったね。…ん?彼のことかね?安心したまえ、かれは無事だ。私はその辺の小物とは違い、安易に捨て駒にしたりはせんよ。」

 彼の口からは、自分と共に戦った戦友が無事であるということを聞かされ、経凛々は安堵を覚える。とはいえ、口を開くことも出来ず、今だ不完全な復活である彼は、只々話を聞くのみである。

 ベアード「いやいや、申し訳ない。君は当分会話が出来ぬほど、ぼろぼろになっている。それ故、私のいるこの空間でゆっくりしてもらえればよかろう。それに、君には後々、他の妖怪たちと共にある場所に行ってもらうこととなる。元気になったらすぐに合流してくれ。」

 その言葉を言い終えた後、彼の体は少しずつ透明になっていき、そして、完全に姿を消した。どうやら、ベアードと名乗るものはほかの場所へいってしまったようだ。

 

 

 経凛々は、彼の言葉通り、しばらくゆっくりすることにした。そんな彼だが、少し疑問に思うことがあった。もしかしたら、ギャイボンは彼の命令で自分に近寄り、あの人間たちの力を試したのではないかということだ。何故だかは分からないが、今回の事件の首謀者である二人が無事であるからだ。しかし、何故だかは分からないが、次第にそのようなことなどどうでもよくなり、彼は再び眠りについた。

ベアード「さて、疲れて眠ってしまったようだ。…しかし、気になることが一つある。あの【ゆすとかいう銀色の髪の少女】、どこかで見たことがあるきがせんでもないが、果たして…」