第三章 黒い剣士12

 そうは言われたものの、ヴァレンタインは何をどうすればいいのか全く分かっていない状況にある。先ほどの戦いで、人外の敵と戦った後、平行世界の自分を元の世界に戻してしまった。そのため、一人一人話を聞くためにこちらの世界に連れてこなくてはならない。相当面倒な話である。

 ガッツ「そんな困った顔をしなくていいぜ。多分、声からして爺さんだと思うが、あの300何ちゃらとかいう奴から一回きりの能力をもらってんだ。」

ガッツはそのまま指を立てると、「逆口寄せの術!」と大声で唱える。一瞬のことではあったが、なぜだろう、不思議と気分が悪くなってしまった。恐らく、術の反動であろう。あたりを見渡すと、あたりの景色はあまり変わっていないように見える。

ただ一つ、何か違うことと言えば、目の前に転がっている平行世界の大統領の死体と、頭を上にあげ無いと全身が見えないほどの巨大な鎧の騎士が立ちはだかっているということだった。