第三章 BERSERK 1

 昔々あるところに、とある騎士がいました。その騎士は非常に武勇がたち、誰も太刀打ちできない程の強さを誇っていました。ですが、騎士らしからぬ非常に横柄な性格で、彼のいた国内ではとても評判が悪い人物でした。勿論、同じ騎士仲間からも評判が悪く、いつものけ者にされていました。もともと、彼は別の国からやってきたのですが、その国とは、戦争をしている敵国で、よく小競り合いが続いていた。かれは、理由あって逃げてきたということもあり、それも原因でますますのけ者とされていました。

 そんな彼にも、大切なものがありました。家族です。苦しい時、悲しい時、うれしい時、どんな時でも彼のそばにいました。家族は母と父、そして奥さんと子供兄妹です。

 

 しかし、彼に悲劇が訪れます。ついに敵国と全面戦争となったのです。その際、彼の家族は見せしめとされて、処刑されたのです。彼は、憤りました。元々、彼がゆがんだ性格になってしまったのは、逃げた先の国の人々からひどいいじめを受けたからでした。この国に逃げた理由は、元いた国があまりにも酷い政治体制だったため、この国へ逃げてきたのです。

ですが、逃げた先の国の人々も、彼に冷たくあたったのです。彼は、世に絶望を覚えました。こんな世界、滅んでしまえばよいのにと。そう感じたとき、以前、商人からもらった【ベヘリット】と呼ばれるペンダントが人の顔の形となり、泣き叫び始めました。

 騎士は、気が付くとどこかわからない世界にいました。目の前には、四人の守護天使【ゴッドハンド】と呼ばれる者たちがたっていました。彼らの中の、長身の男【ボイド】がこう問いかけます。

 ボイド「お前に力を授けよう。その代りに、お前には何かを捧げて貰う。さぁ、お前は何を捧げる?」

騎士は、迷うことなくこういったのです…

 ?「それで、お前は二つの国のすべての人間を捧げることを決めたのだな?首のない騎士【デュラハン】よ。」

デュラハン「左様でございます。うちはマダラ殿。私は、二つの国すべての人間の命を捧げました。おかげさまで、この力を手に入れることができたのですが、今でも後悔しているのです。」

 首が無い騎士は、どういうことか会話をすることが出来る。理由は分からないが、人智を超えてしまった怪物となってしまった故の能力だろう。

 マダラ「ほう、何故だ。かつて傲慢だった騎士よ。」

 デュラハン「なぜだか分からないのですが、すべてを失った後、その衝撃のあまり、性格が昔のころに戻ってしまったのです。気がついたころには、首から上がないのに目が見えるような体質になったり、体がこの世界でいうところの5メートル近い身長になったりということもあったのですが、一番は、【誰もいなくなった】ということの衝撃でした。」

 おそらく、背中の反り具合から言って、上を向いたのだろう。彼は、沈みかけている夕日を見つめながら、哀愁を感じていた。

 マダラ「確かに、いくら相手が憎しみの対象だったとしても、いざいなくなると不思議とむなしい気持ちになってしまったというわけか。皮肉なものだな。しかし、何故今回我々の仲間として与することにしたのか。それ以前に、何故貴様はこの世界に迷い込んでから【ドラキュラ】に300年も仕えたのかが知りたい。」

質問に対し、首のない騎士は一言こう答えた。「自分と良く似ているからだ。」と。

その答えに、少しマダラは納得した。この世界へ来た時に、伝承で聞いた話だが、ドラキュラが人間に牙を向くようになったのは、彼の妻が魔女狩りにあったということを思い出した。そうか、彼も人間に復讐をしようと考えたのは、【同じ人間】である妻を殺され、人間は醜いと感じたということだ。完全ではないが、確かに似ているからかもしれない。復讐対象は、【愚かな人間】という点がだ。