序章-2 全ての始まり

セントラル駅は今日も多くの人が行きかっている。その中に、ある二人の男がいた。一人は50代ぐらいの外見で、白髪交じりでアメストリスでは珍しい{髷}という髪形をしている。

服装は、、彼は自分の住んでいる国にある城郭を基にした和装であると自称している。これもアメストリスでは見ない服装だ。

もう一人は、真っ黒いフードつきのコートを着ている。顔は仮面をつけているせいでよくわからない。

仮面の男は、白髪交じりの男性に語りかけた。

仮面の男「ここがお前の仕事場だ。わざわざ、別世界から来たのだ。しっかりやってもらわねば困るとだけは言っておこう、松永久秀殿。」

松永久秀と呼ばれたこの男こそ、ジェノヴァ事件のきっかけを作った張本人である。しかし、今思えば、彼は本当に事件の末端でしか過ぎなかったといえるだろう。更に、隣には、首謀者

がいたことに気が付かなかったことは今思うと残念でしかない。

松永は、仮面の男と駅の片隅にいた。そして、話を続けるようである。

松永「何、心配はいらんよ。卿は私がしてきたことをよく知っているのだろう。」

仮面「ふっ、そうだったな。東大寺を焼打ちにしたお前なら問題なかろう。それくらいやってもらわねば困るからな。」

二人はゆっくりと歩き始め、駅の行先案内板に移動を始めた。この時代の到発着案内板は電光掲示板ではないため、

現代の空港と同じく、パネルがカタカタ音を立てながら

めくれていくという方式である。二人は、案内板を見ながら話を続けた。

松永「それで、今回卿とこの世界へ来たことについてもう一度確認しようではないかね。」

仮面「それなら、派手に爆破させる。そうしてもらえば構わん。そうすればいい。」

松永は笑みを浮かべながら「愉悦、愉悦。」とつぶやいた。松永は仮面の男のほうを向き

松永「それで構わんのなら些末なことだ。それよりも、卿には何をもらおう?」と尋ねた。

仮面の男は、彼の様子を見ながら笑みを浮かべ、「なら、これをやろう。せっかく手伝ってもらうのだからな。」とコートの中から茶碗を取り出した。

松永は、真剣な目つきで茶碗を見つめ「上等、上等。中々よい出来だ。」とご満悦の様子である。

松永「これほどの茶碗を手に入れるのは、卿も大変であったろう。」

仮面「それほど苦労もしとらん。俺が欲しいものに比べればな。それに、そのようなものに俺は興味を持たん。」

松永「そうか。まあ、物の価値というものは人それぞれだ。卿と私とでも無論だ。」

二人は、駅のホームにの方向に振り返り、近くにある時計を見て「そろそろころあいだな。」と心の中でつぶやいた。

松永「では、始めるとしよう。盛大な宴の始まりだ。」

松永は、邪悪な笑みを浮かべ、親指と人差し指で指を鳴らすのだった。

ちょうど同じころ、駅には一際目立つ大男がエルリック兄弟を駅で待っていた。筋骨隆々で、額から特徴的なカールした髪形、大柄な割に人のよさそうな雰囲気を醸し出している。

彼の名前は{アレックス・ルイ・アームストロング}という。アメストリス国の国家錬金術師であり、この国の軍の少佐でもある。

アームストロング「もう間もなく汽車が到着する頃合いですな。さて、到着したら我輩の{愛の抱擁←と書いてハグと読む}をしてあげねばなりませんな。」

とキラキラしながら楽しそうに待っている。

アームストロング「しかし、今日も人通りが多いですな。まさにこの国の首都であり中心地。」

しかし、そんなことをする余裕はあっという間になくなることとなる。突然、駅の構内は轟音に包まれ、炎上を始めたのだ。駅には悲鳴がこだまし、轟音と共にホームの一部とその周りが

砕け散り、焼け落ちていくのであった。

アームストロング「な、何事ですか!!! これは一体!?」

アームストロングが辺りを見回していると、焼けたホームの近くにいた男が慌てふためいた様子で話しかけてきた。

男A「あんたも早く逃げろ!! こいつはテロだ!! 巻き込まれるぞ。」

アームストロング「何!テロですと!? 安心なされ、ここは私にお任せを。」

アームストロングは、テロの起きたホームへと急いで駆けた。

阿鼻叫喚響き渡る群集をかき分け、事件が起こったその場所につくと、被害の全貌がわかった。線路はひしゃげ、ホームは三分の一ほど吹き飛んだようである。駅の天井部分を見ると、

一部焼け焦げた様子であることは分かった。

 アームストロング「これはひどい… いったいこれは誰の仕業なのか。他国のテロリストが我が国に入り込んだとでもいうことか?」

「これはこれはご明察…とほめておこう。」

アームストロングの後ろから誰かが不敵な笑みを浮かべながらそうつぶやいた

 アームストロング「何!いつの間に!」

 アームストロングはまったく自覚症状がないうちに、犯人の一人に背後を取られていた。彼は驚いてすぐさま後ろを振り向いた。

そこには白髪交じりの男、松永がいた。右手には自慢の宝剣を持ち、左手に添えるように構えている。そしてその顔は、不気味な笑みを浮かべ、愉悦な表情を浮かべている。

それは、余裕の表れを見せているようにも見えた。松永はそのままアームストロングに語りかける。

松永「ほぅ…、卿は確かアレックス・ルイ・アームストロング少佐ではないかね。」

アームストロング「む、何故吾輩の名前を?」

松永「私の協力者からだ。彼は中々使える男だ。」

アームストロングは松永にすさまじい剣幕で迫り「一体なぜこのようなことを!」とさけんだ。その声はホームに響き渡り渡ったが、激しく燃える炎にかき消されるのであった。

松永「まぁ、落ち着きたまえ。私はただ、{あるもの}を彼とともに探していただけだ。」

と、まったく悪びれていない様子である。アームストロングはその態度に激しい怒りを覚えた。

アームストロング「このアームストロング、貴様のような外道は見たこともない。あのイシュバールの騒乱の時にも外道と呼べるものはおったが、貴様の性根はそれ以上に腐っておる!!

 一般人を巻き込んでそのような顔を浮かべるとは、何たる卑劣!!貴様のような輩には…」

彼はこぶしにすべての力をこめ、「我がアームストロング家に伝わる錬金術で貴様を制裁せねばなるまい!!!」と叫んだ。

そういうと、彼は天井から落ちて来たこぶし大程の鉄の塊を、空中でそのままダイレクトで殴った。その塊は錬金術により、自身の上半身の形を象ったものとなった。

その塊は、松永のほうへ轟音を立てながら飛んで行った。

しかし、松永は始めてみる錬金術にも一切動じない様子である、彼は心の中で

「なるほど、これがこの世界における錬金術というものか。実に面白いものだ。だが…少し我々をなめているようだ。」

とつぶやく程心に余裕を持っていたのであった。

「すまない、少し手助けが遅れたようだ。」

仮面の男が鉄の塊を蹴り飛ばすことを予見していたからだ。

仮面「助けが遅くなったな。お前が来るのが遅いと思ってきてみたらやはりこうなっていたか。」

ここに今、再び犯人がそろうこととなった。

松永「いや、卿にはやることをやってもらえればそれで構わん。それよりも…」

二人は怒りに燃えている一人の男のほうを向いた。

仮面「あの男を倒さねばならんな。」

仮面の男は右手に苦無を持ち、アームストロングに向かって飛び出した。

アームストロング「むう!このアームストロング、貴様のような卑劣漢には負けぬ!」

アームストロングは仮面に向かって行く。その勢いは、まさに勇猛無比と形容できるだろう。だが、両者のぶつかり合いは一つの銃声によって止められた

 銃を放ったのは、先ほど主人公の護衛として雇われた雑賀孫一である。アームストロングは振りかざそうとしたこぶしを止め、仮面の男は後ろにひいた。

孫一「おーい!そこのごつーいおっさん!その渦巻仮面にゃ攻撃はきかねぇぜ。」

アームストロングは怒りに燃えていたことをすっかり忘れたどころか、声のする方向を振り返った。しかし、中々見当たらない。

アームストロング「どこのどなたかわからぬが、助太刀感謝する。だが吾輩からはそなたの姿が見えぬが…」

孫一「なーに、かまいやしねぇよ。俺の腕なら大丈夫だ、安心しな。そういや、あんた鋼の錬金術師って知ってるか?」

アームストロング「おお!エルリック兄弟と出会ったのか!!彼らのことはよく知っておる!是非、加勢願いたい。…しかし、奴には攻撃がきかないとは一体どうゆうことなのですか?」

孫一「今からそれを見せてやるさ。よく見てろ…」

孫一は誰も見えない位置から確実に、仮面の男に向け銃口を構えた。

 

さて、ここまでの流れまでいったい汽車の中では何が起こっていたのか?爆破されたところまで一旦時間を巻き戻すことにしよう。

質問の返答をしようと思っていたが、爆発音でかき消され、同時に汽車の中は阿鼻叫喚の地獄と化していた。

エドワード「うぉっ、なんだなんだ?この喧騒は…ってかあんた誰?」

彼は読書をしている間、集中力がありすぎて周りに気が付かないタイプなのであった。

山本「気づくのおそっ!…ってかそんなことを言ってる場合じゃない!ここは早く逃げないとまずいな。」

アルフォンス「しかし、一体何が起こったのでしょうか?」

 山本「どうやら窓の外を見る限り、汽車と駅のホームで爆発があったようだ。」

 エドワード「そりゃ一体どうことだ?まさか、テロでも起こったというのか?」

 山本「どうやらそのようだな…外にいるあいつに見覚えがあるんじゃないかな、鋼の錬金術師さん。」

 エドワード「どうして俺のことを知ってるんだ?あんた見たところ東洋人みたいだが…俺って結構有名人なんだな!」

 エドワードは、急に自慢げな顔をした。よほどうれしかったのだろう、我々が彼のことを知っていたことが。

 アルフォンス「兄さん、そんな顔をしている場合じゃないでしょ。それに、あそこにいるのって。」

 エドワード「ああ、アイザックマクドゥーガルだな…。」

アイザックマクドゥーガル。かつて、この国の首都でテロを起こした末、軍によりその場で処刑された男である。エドワードと私は、間違いなく死んだはずの

者がそこにいることにはすぐさま違和感を覚えた。

 エドワードは私にすぐさま語りかけた。その口調は、普段よりだいぶ柔らかな言い回しである。

 エドワード「すみません、そこの人名前は?」

 山本「あぁ、君にはまだ名乗ってなかったね。私の名は山本誠一だ。よろしく。」

 エド「おう!よろしく!…そうそう、一応俺も名乗っておかないとな。俺の名前はエドワードエルリック。通称『鋼の錬金術師』だ!」

お互い簡単なあいさつを済ませたのち、すぐさまマクドゥーガルについての対策を始めた。

山本「それで。相手は死んだはずの男が何故あそこにいるかって話だ。」

アル「そう、確かに彼はあの時軍によって死亡が確認されたって話なのに。」

エド「あぁ。ということは、あいつはそっくりさんかって話になる。一応俺が知っている中で、別人になり替わる能力を持ってる奴を知ってはいる。けど、おそらく違うな。」

エドワードは気になる点があった。マクドゥーガルは軍にいたころ、水を自在に操ることのできる国家錬金術師として名をはせていた。いま、間違いなく彼はその術を惜しげなく披露している。

マクドゥーガル「この国は腐りきっている!!俺がとめないでいったいどうするというのか!!」

彼はそう叫びながら、爆破された駅を更に破壊し続けている。その狂気じみた姿はまさに彼である。しかし、エドワードは彼を短い間に分析した。

 エド「俺の知っている奴とは違うが、奴はマクドゥーガルではないことは間違いねぇな。術の切れが本人とはくらべもののないほど違いすぎだ。」

 アル「うん。確かにかつてあった時よりも全然違う。術が鈍ったのかもしれないけど、術の錬成もあまりなってないし、多分、兄さんの言うとおりだ。」

 山本「成るほど。それに、あんなことをいうやつが悪人と手を組むとは考えにくいからな。」

 アル「もしかして、それがあなたの言おうとしていた目的と関係が?」

山本「うむ!なかなか勘がいい。その通り、私たちの目的はこの国に来た奴らを捕まえること。そして、この国のトップに、事件が起こることを知らせにね。」

エドワードはそのことに対して、「もう事件が起こってんじゃねぇか!!」という鋭い指摘が入り、私はただ謝るのみであった。

山本「申し訳ない。どうやら、奴らがことを起こすのが早かったみたいだ。恐らく、我々の存在に気づいて早めたんだろう。」

私はそう説明したが、エドワードは不服であるようだ。彼の性格からすれば、この状況は捨て置けないだろう。勿論、私も早く終わらせたいものである。

山本「まず、あいつの化けの皮を剥がすのが先決だ。一応、中々のやり手だろうから慎重に。」

そう、私は慎重にことを運びたかったのだが、気づいた時にはもう遅しという状況だった。凄まじい剣幕で幕マクドゥーガルのもとへ駆けていく様子を

ただ見ているしかない私とアルフォンスなのであった。

アル「ニーサン!行動に起こすの早すぎだよ~!」

だが、アルフォンスの叫びもむなしくこだまするだけであり、

山本「はぁ~、仕方ない。追いかけるとしよう。」

私とアルフォンスはエドワードを追いかけようとした所、後ろの車両に乗っていた辻谷君と孫一が追いかけてきた。

孫一「おいおい、ちょっと待ってくれよ。こんないい男を置いて行こうなんざ百年早いぜ。」

辻谷「おなじく!置いてかないで下さい。ほんとに。」

山本「いや、ゴメンゴメン忘れてたよ。味方は多い方がいいから助かるよ。」

私は忘れていたことをすぐに謝り、私はいまの状況をすぐに説明した。

孫一「そうか、そいつは大変だ。んじゃ、俺は駅の様子を見てくるとしよう。何かにおいがするんでな。んじゃ、先に行くわ。」

辻谷「それじゃ、俺はもっさんたちとついていく。そいが一番でしょう。それが一番。よし、それでは…、今すぐGO!」

山本「おいちょとまて!勝手なことはしてはいかん。なんの考えもなしに敵にあたるなんて…ってあれ?」

辻谷君もエドワードと同じ類であることがたった今判明した。あの男はあれで大丈夫なのか。

置いて行かれた3人組は、それぞれの場所に移動するしかなかった。

ここで再び、駅舎内に戻る。今、駅舎に響き渡るのは、火縄銃『紀州国友』から発射される乾いた音、音、そして音。

鉛の玉は、狙った目標に向かって一直線に向かっていく。今の時代でいえばスナイパー、彼のいた時代なら狙撃者といったところか。

その中でも、日本の戦国時代における最高の傭兵集団『雑賀衆』の頭領、雑賀孫一となればなおさらである。

しかし、銃弾は当たらない、いや、『すり抜けている』のだ。

孫一「ご覧のとおり、奴には攻撃が通じねえってってわけさ。まったくたまったもんじゃねぇよな。」

仮面の男は、おそらく余裕だとでも思っているのだろう。ひそかに聞こえる笑い声が聞こえる。

仮面「どうした、もう終わりか?まぁ、無理もない。破ろうと思って破ることはほぼ不可能だからな。さてどうする、アレックス・ルイ・アームストロング少佐?そして、いい加減出てきたらどうだ、雑賀衆の頭領よ?」

?「へいへい、まぁ最初からこうなることは分かってたからいいけどよ。これ以上は無駄弾だから仕方ぇな。」

そうすると、天井付近からガサッ、ガサッという音がし、男が一人アームストロングの横に降りてきた。

緑を基調とした服装をしており、八咫烏の紋様が目に映る。雑賀衆の頭領である孫一らしいデザインであろう。

孫一「さて、降りて来たはいいけどどうするかまだ考えてないんだよな。そういえば、あんたに実際に会うのはこれが初めてだな。」

 アームストロング「おぉ、そなたが孫一殿か。初めてお目にかかりますな。」

孫一「まぁ、そう固くならなくていいぜ。まずはあいつらをなんとかするしかないからな。」

二人は、正面にいる松永久秀と仮面の男に目をやった。孫一は銃口を相手に向け、アームストロングは相手に対し、堂々と構える。

 一方、松永は「上々、上々。」と笑みを浮かべ、仮面の男も戦闘隊形に入る。

仮面「そうか。では、こちらから行かせてもらうとしよう。しかし、無駄なことをするものだ。我々を相手にそのような攻撃方法では…。」

まさに突然、彼は一瞬にして加速し、一気に距離を詰めた。

仮面「我らに勝つのは…不可能だっ!」

二人はあまりの速さについてこられなかった。いつその手に苦無は握られたのか、刃は確実に二人を狙い、迫る。

?「…なら、三人で相手なら問題ないな?」

苦無は二人の首をはねる前に、激しい金属音をたて、はじかれた。そのまま苦無は宙を舞い、ホーム脇の線路に落ちそうになる。しかし、反射的に体が動き、苦無を再び片手でつかんだ。

仮面「ほう、援軍とはな。このタイミングで現れるところを考えると、大した奴だ…。」

?「…敵とはいえ、ほめられるのも悪くはないのかもしれんが、少し気持ち悪いな。」

こちらの援軍としてあらわれた『青年』は、肩をすくめながらそう答えた。

青年「やれやれ、かなり派手なことをしてくれたもんだな。ここまで派手にやるなんて、聞いた以上のことをやってるな。」

青年は状況を見ると、やれやれと言わんばかりの表情をしながら、少しうつむき右手で顔を抑えるといういつもの癖をやる。

 アームストロング「そこの青年、一体君は何者なのか?」

スコールは、二人の方向を向いた。上下とも黒い厚めの服装をしており、顔には刃物傷がある。 

銃の形をした珍しい武器、『ガンブレード』を右手で持ったまま、肩に軽く乗せたような形で立っている。

 スコール年「そういえば、まだ名乗ってすらいませんでしたね。俺の名はスコール。スコール・レオンハート。バラムガーデンの傭兵部隊『SEED』の一員だ。あなた方のことは依頼主から聞いている。あなた方を助けるため、ここに来た。」

孫一「へぇ~、ずいぶん若い傭兵さんだこと。とはいえ、腕は立ちそうだから問題はないな。」

 こうして、3対2という図式が出来上がり、人数的にはこちらが有利となった。しかし、敵方二人はそれでも余裕といった表情だ。

松永「愉快、愉快。これは中々面白い図式となったものだ。」

一体この余裕はどこから生まれるのか?恐らくは、経験なのであろう。そうとしか言いようのない落ち着きを見せている。

松永「君たちは、我々の邪魔でしかすぎない。それに、先に進む必要があるのだ。」

右手に宝剣を構え、左手に軽くトントンとやる。そして、素早く薙ぐと、火柱が我々を邪魔するように立つ。

アームストロング「この炎は…そうか、貴様がどうやって爆発を起こしたのか今しがた、理解できた。その粉末状の火薬

で爆破したということか!」

松永は愉悦に浸った表情を浮かべ、「明答、明答。」とつぶやいた。

松永「これは中々いいものでな、滅多に手に入らないのだよ。使い道は、こうして戦場で使うというのが一番だ。」

彼の左手には、黒い粉末状のものが大量に握られている。それが、今回の事件を引き起こしたものなのだ。

スコール「全く、大事とか言いながら派手にやるもんだ。」

松永「まぁ、今回は態々『わざわざ』大量に仕入れておいたから問題は無い。」

再び火薬を握り、ばらまく準備を始めた。三人は、敵の攻撃に備えそれぞれ、武器を構えた。

一方、私とアルフォンスは、アイザックのところに到着した。どうやら、セントラルの町中まで来たらしい。

先にエドワードが到着していたようで、アイザック相手に奮戦している。

エドワード「ちっくしょう!怒りにまかせて飛び込んでいったはいいけどよ、流石に厳しいか。」

そして、我々の前についた辻谷君は建物の陰から二人の戦いを見物している。

辻谷「うむ、いい戦いをしておるな。」

しかし、彼は鈍い音とともに崩れ去る。

山本「な~にやっとんだおめぇはよ!」

辻谷「ぬぅ、いや、申し訳ない。って俺なにしたっけ?」

山本「とにかくお前は気が早いし、速い。」

私は呆れた顔をしたのち、まぁいいやという気分に駆られ、これ以上突っ込むことを止めた。

山本「…で、戦いは今どうなっているんだ。」

と怒り気味に私はつぶやく。辻谷君は、気を取り直したのち、正確に状況を解説してくれた。どうやら、一対一で苦戦中のようである。一人で突っ込んだは良いが、

空回りしているようだ。しばらくして、アルフォンスがここに到着し、三人全員そろった。

アルフォンス「あの~すみません。今どういう状況になっているのか教えてもらえないでしょうか?」

辻谷君は親指を立てて、ある方向を指した。戦闘中の二人である。

アイザック「どうした、鋼の錬金術師!そんなことでは俺は倒せんぞ。」

辺りには蒸気が立ち込め、熱気が悶々と漂ってくる。遠くには、水を凍らせたのであろうか、氷柱が立っている。

辻谷君は「まぁ、この通りだ」と返事をし、アルフォンスは呆れてため息をつく。

そんな二人をよそに私は、二人の戦いをただじっと見ていた、…というよりは観察していた。そして、漸く奴の『正体』が分かった。

アルフォンスは、私の様子に気づいたのか、私に話しかける。

アルフォンス「山本さん、一体どうしたんですか?」

山本「…いや、ちょっと考え事をしていただけさ。アルフォンス君。そして辻谷君。少し手伝ってはもらえないかな。」

私はすぐさま作戦の趣旨を二人に説明した。アルフォンスは、内容に驚きを隠せないの様子で声を荒げ始めた。

アルフォンス「いやっ、まさかそんなことが本当にあり得る筈が…」

言い切ろうとする寸前に辻谷君が口を挟んだ。

辻谷「普通なら、NOと答えるだろうな。しかし、これも現実だ。とにかく、今は俺たちを信じてもらえたら嬉しいが…」

最初は戸惑いを隠せなかった彼だが、彼は首を縦に振ってくれた。

アルフォンス「うん、今はお兄さん達二人を信じてみるよ。」

山本「ありがとう。我々としても助かる。では、『奴』の化けの皮を剥がしに行くとしよう!」

三人は、すぐさま作戦の準備を決行し始めた。

エドワード「ちきしょー!上手くいかねぇ。このままじゃ…」

エドワードは、次第に限界に近づいていた。アイザック錬成した氷の槍が彼めがけて飛来してきた。

アイザック「終わりだ!」と叫んだ彼に対し、

辻谷「いや…、終わるのは『アンタ』のほうだ!!」

氷の槍は、何かに粉砕され、かけらとなり無残な状態となった。

アイザック「お前は一体?」

辻谷は、右手に持った木刀をアイザックに向け、名乗りを上げる。

辻谷「おれか。俺の名は『辻谷示現流第十五代目当主・辻谷広行。』知っておいて損はないぜ。」

エドワードは、助けられ、キョトンとしている。ただ、それよりも驚きのほうが大きいのであった。あの氷を『棒』のようなもの、いやっ、よく見ると木で出来た刀で粉砕したのだ。

辻谷は、エドワードに気を使うかのごとく話しかける。

辻谷「よう!少年。元気にしてたか?」

エドワードは困惑した、何故なら「…あんた、誰?」というセリフからして理解いただけただろう。

辻谷君は「いや、だから俺の名は…」ともう一回名乗ろうとしたが、氷の塊が邪魔をした。

アイザック「おい!貴様らこっちの存在を忘れてはいないか。」

完全におかんむりである。再び彼が氷柱を出そうとしたとき、爆発が起きた。

山本「おいおい、辻谷君。そんなことをしている暇はないだろう。」

そこに現れたのは、私とアルフォンスである。

辻谷「いやいや、ゴメンゴメン。ちゃんとまじめにやるから許してください。」

この二人を見て、この二人は大丈夫なのであろうかと不安がよぎる鋼の錬金術師とその弟は思った。しかし…

山本「さてさて、こんなことをしている場合ではないな。まずは…」

私たち二人の目つきが今までにない程に真剣なものとなっていく。私は右手を相手に向け、何やら口走る。すると、先ほどの爆発をもう一度起こした。

山本「あんたが一体何者か、正体を暴いてやろう