幕間之1 全時空省会議 終

 そんな彼は、いや、そこにいる者たちは【ある人物】に一切気づいていなかっただろう。その人物は、多くの人々に紛れコミ、おのれの目的の達成のため、その会議に潜入していたという事実を。

 

 ?「…さて、これであの青年も【リユニオン】することになったというわけね。気づいているかしら?あの老人が私で、自分が無意識に操られているということに。」

 そうほくそ笑む【彼女】は、世界中を見下ろすために作られたようなその建物を後にする。この時代にふさわしいような、未来的なデザインをした車に乗り込み、ニューヨーク市内のホテルへと移動する。この時代でも、ニューヨークは様々な人々が行きかう。なるほど、人種のサラダボールといわれる所以もよく理解できると彼女はそう考えこんでいた。

 ?「さて、表向きは【ゼーナ】という女性を演じてはいるものの、いつ化けの皮が剥がれるか【この時代では】まずいわね…。明日にでも、21世紀の【あの場所】へ飛ばないと行けない。それに、あの場所なら、多くの英傑たちが集まるための最高の条件が満たされている。そう、わが息子の復活のための最高の舞台がね…ふふふ。」

 彼女は、今日のことに関しては自画自賛していた。あれだけ本人そっくりに化け、さらにデータも間違い無く本物を渡したら間違い無く本物の【元就】だと思うはずだと。結果、うまいこと【あれ】を体に付着させることに成功し、ただあの場所に向かうように動くだけとなったのから。ふと頭上を見上げると、空にはきれいな満月が見える。今度の計画が成就する日も確か満月だ。その時が来るのを、彼女は心の底から楽しみにしているのであった。

 だが、彼女の存在に関して二人だけ気づいていた。一人は、変装された毛利元就で、もう一人はあの【SHO】その人であった。気づいた二人は、周りの視界から見えないところで防犯カメラの映像を見返していた。

 元就「…このように、私が眠らされていた間に、私のそっくりさんが山本と話をしています。私の預けようとしたデータを少しばかり改竄して。これは、おそらく誰かが変装していたとしか思えません。しかも、もう一人の私は煙のように消え去ったのです。」 

SHO「…うむ、いったいこの者は何をしにここへ参ったのか。そして、どうやって【長官】殿のデータの一部を改竄できたのか。元就殿、よろしければ長官殿を調べてはくれまいか?最近の彼には何やら怪しげな噂が立っておる。もしかすると、この者と何か関連があるかもしれぬ。」

 

いつもとは違う厳しい口調でSHOと呼ばれるものは強く念を押すような口調で話す。何やら、大きなものがさらに大きなものに隠れてうごめいていると感じているからだ。元就も、山本を止めてしまおうかと考えたが、どうやらそのデータの【五分の四】は本物であるということである。ここは一旦、敵をおびき寄せて一網打尽にしてしまったほうがよいのでは?稀代の謀略家はそう考えたのであった。

 元就「さて、私の策がうまくいくかどうか、こればっかりは予測が難しいね。でも、若いものの力を信じてみよう。」