第三章 黒い剣士4
辻谷「あっ…」
気づいたときには、その怪物はもう天高く舞っていた。我々の中でファンタジー世界のように空を飛べる人は…いないということは間違い無い。
陸奥「俺たちじゃあいつには届かないか…」
陸奥は、自分の頬を人差し指で掻き、冷静に状況判断をする。当然の如く、この結論に達するのは一秒とかからなかった。 リヒター「そうだな、俺のクロス投げでもおそらく届かないだろう。やつが、我一族の宿敵の配下であることが分かっただけでも納得した。正確にいうと、協力者の配下であるが。」
もうすでにはるか遠くに飛んでいった蝙蝠猫を見つめながら、三人はすぐさま次のことを考えていた。切り替えが早いのが彼らの良いところでもあり、悪いところでもある。この場合、果たしてどちらであろうか。ただ、彼らの考えでは、仕入れた情報からして、放っておいても問題はないと判断した。ということで、一切問題はないと判断したうえでの切り替えであった。
辻谷「さて、これからどうする。まだ町まで相当あるけど。」
リヒター「そうだな。しかし、 この時代の目標地点に行くためには、最も近いところでも【20キロ】離れた地点ではないと駄目で、あとは自力で何とかしなくてはならないとは、時間旅行というものも大変なものだ。案外自由にできないのだな」
陸奥「そうだな。ドラ○もん見たいにうまくいかないみたいだけど、時空を飛び越えるってだけで結構驚きなんだよな。」
三人は、あたりを見回して、自分たちがどこにいるのかを確認するかのように見渡す。あれから半分は歩いていたはずだが、見えるのは赤い荒野だけだ。
辻谷「う~ん、そろそろ迎えの人が来るはずなんだけど。…と、話していたらどうやら現れたみたいだな。」
各々、来た道を振り返ると後ろから立派なイギリス車『おそらくジャガーかと思われる』が後ろから現れる。三人の目の前で止まった車の中から現れたのは、メガネをかけ、神父の格好をした男だった。彼の名を、【アレクサンド・アンデルセン】という。
アンデルセン「どうやら、こちらでよろしいようですな。皆さま、お待たせいたしました。【アレクサンド・アンデルセン】と申します。どうか、よろしくお願いいたします。
その声を聞くと、低く響き渡るような声をしているため、悪人のような印象を受けるものの、不思議と嫌味な感じはしない。寧ろ、その人となりはよさそうだ。