第三章 黒い剣士6

そんなことを呟く黒い剣士こと【ガッツ】。その風体のせいで、寧ろこちらが吹き飛ばされそうになりそうだ。引き続き、彼は金属の乗り物をじっと良く観察する。

 ガッツ「それにしてもこんな金属の塊がよく動くもんだな?…まぁ人を乗せるんなら、確かにこれぐらいしっかりしていなくちゃいかんわけだ。」

 

辻谷一行の視線も、正面に立つ大柄な男にのみ注がれている。一体どうしたらこのように鍛えることができるのだろうか、等と思ってしまうほどの肉体だろうということがその鎧から想像できる。

 アンデルセン「…おっと、見つめている暇はありませんでしたね。そこの人、少しどいていただけないか…」

そう呼び留める前に、辻谷が黒い剣士のところに駆け寄る。というより、もう目の前に移動しているが。

 ガッツ「おっ、いつの間に俺の目の前に人間が!?」

 辻谷「どうも、あんたとは始めてだな。…っと、名乗るのは後だ。しーーんぷ!あと一人分乗れるはずだよな!?」

いきなりとんでもないことを言い始める未来の剣豪。ある意味大人物である。いきなりこの男を車に乗せようというこの男、流石すごい漢協会所属、やることが違う。

 

 陸奥「いや、いきなり何を言いだすんだ…。見知らぬ人をいきなり車にのせようとするなんて…」

唯一冷静な陸奥は、この状況に対して冷静に突っ込む。いや、突っ込まないほうが可笑しいだろう。普通は見ず知らずの人を車に乗せることは無いだろう。それに、そんなことをしても普通は誘っても車に乗るわけが…。

 ガッツ「へぇ、乗り心地結構いいんだな?俺がいたとこじゃこんなん見たことなかったからなぁ。」

 

のったよこの人、見た目こんな感じなのに乗ったよこの人。よく見ると、アンデルセン神父も指を立てていい笑顔をしている。この人とその周りの人物はこんな人たちばっかりなのか。

しかし、これが辻谷さんが言っていた【ベルセルク】ガッツ。いつの間に横に座った彼を近くでよく見ると、とても自分に近い年齢とは言えない容貌をしている。右目は潰れ、髪は一部白髪掛かっている黒髪、傷だらけの引き締まった体。いくら死にかかったことが何度もある自分でも、ここまでは無い。一体どれほどの苦労をしてきたのか、想像を絶する。