第三章 黒い剣士7

 アンデルセン「さて、皆さん乗りましたかな?準備ができ次第、車を走らせたいのですが?」

こうして、一人客人を増やしたこの車は、残り10キロとなった車道を立派な車が走り出す。

 

さて、移動が楽になるということで乗せてもらったのはいいものの、先ほどから一人の青年がじっとこちらを見たまま一切目を離さない。何を隠そう、この辻谷という男である。

 ガッツ「おい、なにじっと見つめてんだ?いいか、絶対俺に触んじゃねぇぞ。そうしたら、この自動車とかいうものごと破壊しかねねぇからな。」

 果たして、聞いているのか聞いちゃいないのか全く分からないが、ただよく観察しているだけで、さすがにそこまではやらないようだ。

 

 ほかの三人もどうやら話に花が咲いているようで、どうやら会話に入る隙はなさそうである。このままでは相当暇だからこれから何をしようかなどと考えているところ、辻谷がこちらを向いて話しかけてきたようだ。 

 辻谷「なぁ、あんちゃん。俺のこと見覚えないかな?」

 ガッツ「…はぁ?何言ってんだあんた?」

いきなり何を言いだすのかこの男は?突然そのようなわけのわからないことを言うとは。…しかし、この男をみると、不思議とある人物を思い出してしまう。何故だろうか、あの男と似た雰囲気の人間が二人といようとは。しかし、こっちのほうが理性がよりすっ飛んでいるような感じだ。しかし、心の奥底では何を考えているのか分からないという表情をたまにだが見せる。そこのところがやはり【アイツ】を思い出してしまうのだ。

 陸奥「しかしおかしいですね。あれから結構移動した筈ですよね。」

 アンデルセン「う~む、確かにもうついてもいい筈なのですが、何故かたどり着きませんね。」

どうやら、彼の視線を気にしている間にかなりの時間が過ぎたった様である。確かに、もうついてもいい筈なのだが、あれから一行につく気配がない。…そんなことを気にせずじっとこちらを見続けている男を無視して、ガッツも話に加わる。

 ガッツ「確かに、いい加減着いてもおかしくは無いんだろうが、街どころか、何にもねぇぞ。」

 リヒター「そうだな。むしろ、何やら妖気が立ち込めてきたようだが。」

外を見渡すと、日の光がいつの間にか黒く輝くものと変わり、荒野には霧が立ち込めてきた。どうしたのだろうか、この地域には霧が立ち込めるはずが無い。ガッツは、もしやと思い、自分の首の後ろを触れてみる。しかし、流れるはずのものが流れていないということは、己の仕業というわけではないようだ。

 ガッツ「これは一体どういうこった?おい、そこの少年。この事態をどう思う?」

 陸奥「そうですね、ただ、わかることは…【あれら】を倒し続けることしかないということですね。」

皆が分かったことは只一つ、地底から湧いてきた髑髏の怪物と、ゾンビの群れをどうにかすべきであるということだけであった。

アンデルセン「おや、これはこれは。この怪物どもを何とかするしかないようですね。」

リヒター「あぁ、どうやら」

陸奥「そのようですね。しかたない。あいつらをとっとと片づけるとしようか。」

 いつの間にこんなことになったのだろうか。この化け物どもが湧いてきたのは。そんなことはどうでもいい、ただ、そこにいるものは戦闘の準備を始める。…約一名を除いてではあるが。

まず、勢い良く飛び出すのは黒い剣士、ガッツだ。

ガッツ「さて、こいつはいい余興じゃねぇか!一体なんでこうなっちまったか分かんねぇが、邪魔するってんなら容赦しねぇ。」

 その戦闘、まさに【ベルセルク】という言葉が当てはまるほどの戦いぶりである。人が持てるのか疑わしいほどの巨大な剣、いや、【鉄塊】を自在に振り回すその様は、只驚嘆させざるを得ない。